著者
油野 規代 加藤 真由美 坂本 めぐみ 藤田 結香里
出版者
日本転倒予防学会
雑誌
日本転倒予防学会誌 (ISSN:21885702)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.33-44, 2022-05-09 (Released:2023-01-26)
参考文献数
21

【目的】転倒したがん患者の特徴と,転倒による損傷および治療の状況を文献レビューから明らかにすることを目的 とした。【方法】医学中央雑誌Web 版Ver.5 のデータベースからがん患者の症例報告について文献検索し,除外基準,採択基 準に基づき,95 編の原著,100 事例,104 件の転倒を分析対象とした。【結果】患者の特徴は75 歳未満が78 名(78.0 %)であり,乳がん患者が26 名(26.0 %)であった。転移を認めた患 者は70 名(70.0 %)であり,そのうち骨転移のある患者は44 名(44.0 %)であった。転倒による損傷は97 件(93.3 %)に発生していた。そのうち骨折が71 件(68.3 %)であり,大腿骨骨折が52 件(50.0 %)であった。非定型大腿骨骨折18 件(17.3 %)が,病的骨折13 件(12.5 %)より多い傾向にあった。大腿骨骨折に対して骨接合術,人工骨頭・股関節置換術が47 件(45.3 %)に行われ,病的骨折に対して腫瘍切除術が10 件(9.6 %)同時に行われていた。【結論】転移のあるがん患者に転倒が発生する傾向がみられ,転倒したがん患者において損傷の約半数が大腿骨骨折 であった。薬剤の使用が影響した非定型大腿骨骨折と病的骨折が,がん患者の転倒における損傷の特徴であった。病的骨折に対して腫瘍切除術が同時に行われていた。