著者
藤間 剛
出版者
日本熱帯生態学会
雑誌
Tropics (ISSN:0917415X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.55-72, 1999 (Released:2009-02-28)
参考文献数
36
被引用文献数
2 5

ボルネオ島は湿潤熱帯気候下にあるが,その東部は年により強い乾燥におそわれることがある。1982-83年と1997-98 年の非常に強いエルニーニヨ南方振動の影響でおきた異常乾燥時には,ボルネオ島東部で大規模な火災がおこり,火の影響を受けた土地はともに500 万ヘクタールに達した。インドネシアでおきる森林火災の火もとは,火入れ地拵えからの延焼であることが多い。火入れは古くから行われてきたが,近年は火入れがおこなわれる範囲がひろがったこと,規模の大きい火入れが行われるようになったこと,そして火が燃え広がりやすい草原が増加したことなどにより異常乾燥時には広大な面積の土地が火の影響を受ける。森林の火災被宮は過去に受けた撹乱の強さと関係し, 1983 年の火災では天然林と比べて過去に択伐を受けた林の方が被害が大きかった。1983 年から1998 年の15 年間は,被災した森林が十分に回復するには短すぎたため, 1998 年の火災では過去に伐採および火災の影響を強く受けた林分の被害が大きかった。15 年間隔でおこった2回の森林火災によって,萌芽力がなく埋土種子も作らない樹種では開花·結実可能な個体は限られたものとなっている。火災の繰り返しにより,森林の再生は妨げられさらに困難になった。ボルネオ島東部のように, 異常乾燥時に火災がおきる地域で森林の保全や修復を行うには,火災の再発防止策がまず必要である。