著者
蘆田 耕一
出版者
島根大学
雑誌
山陰研究 (ISSN:1883468X)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.184-167, 2009-12-31

『類題八雲集』をあらゆる観点から論じたものである。(1)諸本間において、「鶴山社中蔵板書目」の書名に違いがあり、または見返しの記載に有り無しが存在する。(2)編者や成立にはさしたる問題はないが、歌数が一三二〇首、歌人が三四四名は、ある地方だけの歌人の歌を収めたものとしては他に知られるものはなく、大部な歌集である。歌の取材源は明確ではないが、各地で催行された歌会や鶴山社中、亀山社中という歌壇結社での歌会から採用された可能性がある。(3)本集は「鶴山社中蔵板」とあり、地方版、私家版である。この「蔵板」で他に何点か上板している。(4)印刷部数や上板までの日数や費用については、一般的な事例を挙げたが、必ずしも明確ではない。本集は知られる限り三種類あるが、増刷されたのであろう。(5)地方版、私家版であるので、三都や名古屋等の拠点となる本屋が売り捌き所となっている。かなりの需要のあったことが分かる。(6)名所を詠んだ歌が多く見られ、有名なものから珍しい名所まであり、これも歌会で詠まれた可能性がある。13;