著者
富濱 毅 西 八束 荒井 啓
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.3-13, 2006 (Released:2007-09-14)
参考文献数
31
被引用文献数
5 9

赤焼病細菌の運動性やバイオフィルム形成, 葉圏での生存, 病原力に及ぼす菌体外多糖質 (EPS) 産生および鞭毛の影響について, 突然変異株を用いて検討した. EPS産生はバイオフィルム形成, 葉圏における細菌集合体の形成, 無傷部位での乾燥耐性に関与したが, 病原力に対する影響はなかった. 鞭毛は, Swim型の運動性, バイオフィルム形成, 葉圏における細菌集合体の形成, 有傷部位での生存, 組織内での増殖に関与した. さらに, EPSと鞭毛との交互作用が, バイオフィルム形成および無傷部位での生存に関与することが明らかとなった. Swarm型の運動性には, 鞭毛およびEPS以外の要因が関与し, Swarm型の運動性と病原力との間には高い相関が見られた. 以上の結果から, 赤焼病細菌のEPS産生は主に葉圏の無傷部位における生存に, 鞭毛は葉圏の有傷部位における生存および組織内での増殖に重要な役割を持つことが明らかとなった.