著者
西 利道
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.39-46, 2008 (Released:2008-11-07)
参考文献数
6

ICH E2Eガイドラインは平成17年9月16日付の通知「医薬品安全性監視の計画について」で実装された。E2Eによりその薬剤のプロファイルに応じた市販後の安全対策及び調査・試験が求められているが、E2Eを踏まえて計画した経験が少ないため、具体的な対応策については十分には検討されていない。 抗癌剤TS-1で実施した安全対策および調査・試験を取り上げ、E2Eの観点から説明する。 TS-1の市販後における重要な特定されたリスクとしては、副作用のプロファイルが類薬と大きく異なること、相互作用のため5-FU系薬剤との併用は禁忌であること、腎機能障害により副作用が増大することが上げられる。重要な不足情報としては、他の抗癌剤との併用情報がないこと、術後に使用した場合の有効性・安全性情報がないこと、長期に使用した場合の情報が少ないことが上げられる。これらの課題に対してどのように対応したか説明する。 市販後の安全対策と調査・試験の計画は、画一的に実施するのではなく、その薬剤のリスク等を見極めて実施する必要がある。