- 著者
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西北 健治
井尻 朋人
鈴木 俊明
- 出版者
- 一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
- 雑誌
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, no.3, pp.222-228, 2021-12-31 (Released:2022-05-11)
- 参考文献数
- 21
【目的】本研究は,体幹傾斜角度と頸部の角度を変化させたリクライニング車椅子姿勢と嚥下困難感との関係を明らかにすること,また顎舌骨筋と胸骨舌骨筋の座位姿勢の筋活動量と嚥下困難感との関係を明らかにすることを目的とした.【方法】対象は健常成人10名とした.課題は ① 姿勢保持の筋活動の測定,② 9パターンの姿勢での嚥下動作,③ 各姿勢での嚥下困難感の回答とした.座位姿勢は頸部屈曲20°,中間位,伸展20°の3 パターンと体幹傾斜80°,70°,60°の3 パターンを組み合わせた9 パターンを設定した.嚥下困難感は安静座位(頸部中間位,体幹鉛直位,股関節,膝関節共に屈曲90°,足底は床面接地)での嚥下を基準として,10 が最も飲み込みやすいとした0~10 で回答させた.筋活動の測定は顎舌骨筋と胸骨舌骨筋とした.【結果】頸部屈曲20°,中間位,伸展20°いずれにおいても,体幹傾斜60°が80°より有意に嚥下困難感の値が低値であった.そして,体幹傾斜60°かつ頸部伸展20°は他の肢位と比べ嚥下困難感の値が最も低値であった.またリクライニング車椅子座位姿勢時の顎舌骨筋,胸骨舌骨筋の姿勢時筋電図積分値相対値と嚥下困難感に有意な負の相関を認めた.顎舌骨筋はr =-0.50,胸骨舌骨筋はr =-0.54 であった.【結論】体幹傾斜60°かつ頸部伸展20°は,他の肢位と比べ嚥下困難感の値は低値であり,その要因として,姿勢保持時に顎舌骨筋と胸骨舌骨筋の筋活動の大きさが関係すると考えられた.嚥下困難感を生じさせないためには,顎舌骨筋と胸骨舌骨筋の筋活動が少ないポジショニングを検討することも一つの指標になると考えられた.