著者
森 慶太 越川 真男 明石 健吾 西倉 哲司 嶋津 啓二 高折 光司 西口 健介 村上 徹 依藤 壮史 江口 恵梨子 田中 敬雄 仙崎 英人 桑原 隆
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.853-857, 2010-10-28 (Released:2010-11-17)
参考文献数
11
被引用文献数
1

透析患者に用いるリン(P)吸着剤として,従来からの沈降炭酸カルシウム(Ca)や非Ca性である塩酸セベラマーに加え,新たなP吸着剤として炭酸ランタン(La)が用いられるようになった.炭酸Laは非Ca性で,炭酸Caやアルミニウムゲルと同等のP吸着能力があるとされ,さらにほぼ体内に吸収されないため安全性が高いといわれている.しかし,少量ではあるが複数の臓器に沈着することが知られており,長期投与における安全性が課題となっている.今回われわれは,炭酸Laの使用を開始したPコントロール不良の末期腎不全患者が,虚血性腸炎を起因として急変し死亡した症例を経験した.生前の腹部X線および腹部CTでは円形の高濃度の陰影を4個認め,噛まずに内服した炭酸Laチュアブル錠が疑われた.病理解剖では著明な肥大型心筋症と広範な虚血性腸炎を認めたほか,ほぼ原型をとどめた炭酸Laチュアブル錠が消化管内に計4個確認された.死因は肥大型心筋症および虚血性腸炎と考えられたが,炭酸Laチュアブル錠自体と虚血性腸炎との直接的な因果関係は不明であった.炭酸Laチュアブル錠は崩壊剤を含まないため噛み砕かずにそのまま内服すると溶解しにくく,十分なP吸着能を発揮できないことが予想された.より良いPコントロールのため,内服に関しては充分な患者教育が必要と考えられる.
著者
西口 健介 王 麗楊 寒川 昌平 山田 佐知子 桑原 隆
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.471-476, 2020 (Released:2020-09-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1

血中カルシウム (Ca) 評価に血清総Ca (tCa) が使われるが, 低蛋白血症では評価が難しく, またCaの生理学的効果はイオン化Ca (iCa) によって決定されるので, iCaを測定すべきとされる. 透析 (HD) 患者の血清Ca管理目標範囲は8.4~10.0mg/dLであるが, iCaについては不明である. HD患者37名に透析前の定期検査時に全血をRAPIDLab1200 (SIEMENS) でガス分析を行い, 凍結血清のiCa, pHを外注検査委託した. AlbはBCP改良法で測定, 3.1g/dL以下, あるいは4.0g/dL以上のAlb補正CaをそれぞれKDOQI-1, KDOQI-2式で算出した. ガス分析, 外注検査pH補正iCaとAlb補正Caには, それぞれy=0.092x+0.300, r=0.807, y=0.132x+0.092, r=0.853の関係があり, Ca目標値8.4~10.0mg/dLに相当するiCaは, ガス分析で1.07~1.22mmol/L, 外注血清検査で1.20~1.41mmol/Lとなった.