- 著者
-
小川 俊子
西尾 淳子
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年歯科医学会
- 雑誌
- 老年歯科医学 (ISSN:09143866)
- 巻号頁・発行日
- vol.32, no.3, pp.386-398, 2017-12-31 (Released:2018-01-25)
- 参考文献数
- 30
嚥下障害があり,口腔健康管理を自分で行うことができない要介護高齢者に適切な口腔清掃を継続して実施することは困難である。本研究の目的は,口腔清掃の一手法として,安価で,入手しやすい物品である食用ゴマ油を用いた口腔を清拭する方法の効果を評価することである。 研究デザインは多施設一群事前事後テストデザインを用いた。対象は非経口摂取で口腔健康管理に全介助を要する高齢者13名とした。介入として,研究者らがすでに作成した方法によって食用ゴマ油を用いた口腔の清拭を2週間実施した。口腔清掃の効果の評価は,舌背の細菌数・カンジダ属真菌数およびPseudomonas属細菌数,頰粘膜および舌の水分量,口腔内アセスメントスコアガイドを用いたアセスメント,口腔粘膜細胞診によって実施した。 2週間の本法の実施によって,舌背の細菌数は介入後に-0.56±0.63 log10 CFU/swab(n=12)と減少(p=0.010)し,カンジダ属真菌数は介入後に-1.55±2.19 log10 CFU/swab(n=9)と減少する傾向にあった(p=0.066)。アセスメントでは「舌」「口臭」について6名が改善,「口唇」が3名,「唾液」「粘膜」「歯肉」について2名が改善した。口腔粘膜細胞診による口腔粘膜の状態は11名が改善した。 食用ゴマ油を用いた口腔の清拭は,非経口摂取で口腔健康管理に全介助を要する高齢者の口腔内微生物を減少させ,口腔粘膜の状態を改善させる点で有効であると考えられた。 今後,より多くの対象者に長期的に実施したときの効果について明らかにしていく必要がある。