著者
佐々木 恵彦 小谷 圭司 西山 嘉彦 林 良興
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.141-148, 1984-04-25
被引用文献数
2

マツの苗木の樹液流動を水溶性の色素によって追跡した。この方法により, マツノザイセンチュウ病の初期症状および回復現象を観察することが可能である。ザイセンチュウ接種1日後に, 幹の下部の横断面に白い斑点が現われる。この斑点は樹脂道から樹脂が異常に仮道管部に浸出し, 拡散するために生じたものである。病状が進行するにつれて, 白い斑点が拡大していく。水分の通導は異常になっているが, この段階では, まだ葉に水の供給が行われている。さらに病状が進行すると, 死んだ樹脂道, 髄に水が侵入し, 異常な樹液上昇を示す。病状の最終段階では, 通導組織が完全に閉そく状態になり, 水の上昇は見られない。マツノザイセンチュウを接種した苗木の中に, 回復現象を示した苗木があった。この苗木の材部内側には, 樹脂の流出した斑点が認められるが, 外側は新しい仮道管ができ, 正常な水分通導が行われている。マツが枯死に至るためには, 形成層の完全破壊が必要であることを示唆している。上記の方法は, マツノザイセンチュウ病の初期診断に利用可能である。