著者
松岡 有子 角谷 佳城 山田 正一 西山 明秀 三家 登喜夫
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.155-162, 2021-03-30 (Released:2021-03-30)
参考文献数
19

2009~2018年度の10年間に当院を救急受診した糖尿病治療薬による重症低血糖(自己のみでは対処できない低血糖)について調査した.患者数は延べ329例(救急受診者の0.66 %)で,高齢でやせ型に多かった.明らかな1型糖尿病患者は11.2 %存在した.治療法はインスリン治療が42.2 %,インスリンと経口薬併用が16.4 %,経口薬が41.3 %であった.経口薬のうち86.0 %はスルホニル尿素薬が投与されていた.また,スルホニル尿素薬投与者の25.9 %が腎機能低下者であり,29.9 %にdipeptidyl-peptidase-4阻害薬が併用されていた.患者数やその救急受診者に対する比率は,いずれも2009年度が最も高く以後漸減し,2018年度の比率は2009年度の約1/2になっていた.この減少はスルホニル尿素薬に起因する低血糖の減少によることが考えられた.