著者
赤木 剛士 梶田 啓 木部 隆則 森村 春香 辻本 誠幸 西山 総一郎 河井 崇 山根 久代 田尾 龍太郎
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.214-221, 2014 (Released:2014-07-31)
参考文献数
44
被引用文献数
4 28 2

雌雄性は作物の栽培そして育種の大きな制限要因となる.カキ(Diospyros kaki Thunb.)の雌雄性に関してこれまでに多くの形態学的な観察が行われ,カキは雌雄混株あるいは雌性両性異株とされている.しかしながら,カキにおける雌雄性の遺伝制御機構は明らかにされていない.本研究では,カキ(六倍体あるいは九倍体)の近縁野生種であり,雌雄異株であるマメガキ(D. lotus L.)(二倍体)を用い,交雑分離集団を作出し,雌雄分離の調査を行った.また同じ集団を用いて AFLP 解析によって雌雄性判別のための分子マーカーの開発を試みたところ,雄性と共分離を示す 2 種類の AFLP バンド(DlSx-AF4 および DlSx-AF7)が同定された.このため,マメガキの雌雄性は,他の多くの雌雄異株の植物種と同じく,単一の遺伝子座(ハプロブロック)によって支配される雄性異型接合型(XY 型)であることが明らかになった.しかし,DlSx-AF4 から作製した SCAR マーカー DlSx-AF4S および雌雄性形質の分離は,一遺伝子座支配における理論値である 1:1 から有意に雌性側に偏り,1:2 に近い分離を示した.DlSx-AF4S はカキにおいても雄花の着花性と相関を示し,カキの雌雄性もマメガキと同様の遺伝制御を受けていること,ならびにカキの育種における DlSx-AF4S を用いたマーカー選抜の可能性が示された.