著者
松本 和浩 李 忠〓 千 種弼 金 泰日 田村 文男 田辺 賢二 黄 龍洙
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.293-297, 2008
参考文献数
10
被引用文献数
1

韓国産イチゴ品種'Mae-hyang','Seol-hyang'および'Keum-hyang'と'章姫'を4℃または20℃で4日間貯蔵し,果肉硬度,可溶性固形物濃度,滴定酸度,アントシアニン濃度および糖組成の品種間差異を調査した.各品種の糖組成をみると'Mae-hyang'および'Keum-hyang'はスクロースが,'Seol-hyang'および'章姫'はフルクトースとグルコースが主体であった.また糖蓄積型ごとに各貯蔵温度における糖組成の変化が異なることが明らかになった.低温貯蔵によりいずれの品種も果肉硬度が上昇したが,特に'Mae-hyang'において顕著であった.また,'Mae-hyang'は貯蔵温度にかかわらず酸含量および糖酸比の変化が少なく,20℃貯蔵区における総可溶性糖含量の低下も他品種比べ少なく,安定した貯蔵品質を示した.一方,'Seol-hyang'は他品種に比べ20℃貯蔵区において酸含量の上昇と糖酸比の低下が起こりやすかった.また,'Keum-hyang'はいずれの貯蔵区でもアントシアニン濃度が高く,4℃貯蔵区でも糖含量の低下がみられた.これらの結果より,'Mae-hyang'が他の韓国産所品種に比べ貯蔵中の硬度と品質を保ちやすい長期貯蔵に適した品種であると認められた.
著者
早田 保義 今泉 由紀子
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.708-710, 2000-11-15
被引用文献数
3 6

わが国の代表的な4品種の観賞用ヒマワリについて, 日長が花芽分化と開花に及ぼす影響を調べた.4品種ともに播種から花芽分化までの日数は8時間日長で短縮された.しかし花芽分化から開花までの日数は, 'ビックスマイル'および'サンリッチオレンジ'では8時間日長と12時間日長で短縮され, 逆に'タイヨウ'では16時間日長で, 'バレンタイン'については16時間日長と12時間日長で短縮された.開花時の花序の直径は, 'サンリッチオレンジ', 'タイヨウ'および'バレンタイン'では処理区間での差がなかったが, 'ビックスマイル'では8時間日長で若干減少した.以上の結果より, 本実験で供試したヒマワリは品種によって花芽分化の最適日長と花芽発達の最適日長が異なることが明らかとなった.このことから, ヒマワリを栽培する場合に栽培期間の短縮を図るための日長処理時期は「播種時∿花芽分化期」と「花芽分化期∿開花時」の二つの時期に分け, それぞれの時期に適した最適日長処理を行うべきと推定された.
著者
土井 元章 斉藤 珠美 長井 伸夫 今西 英雄
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.854-860, 1999-07-15
被引用文献数
2 3

1. 小花の30%が開花した段階で採花したシュッコンカスミソウ'ブリストル・フェアリー'の切り花を水にいけ20&acd;29℃下に保持したところ, 20℃下では小花は形を保ったま老化してドライフラワー状となり, 黒花とはならなかったが, 23℃以上の温度下では急激に花弁がしおれて萎縮し, 黒花となった.2. つぼみ段階で採花した切り花に対し0.2mM STSと4%ショ糖を含む前処理液で3時間の水あげを行っただけでは, 25℃下における黒花の発生を完全に回避することはできなかった.前処理に引き続いて0.26mM 8-hydroxyquinoline sulfate (8-HQS)と4%ショ糖を含む開花用溶液にいけて糖を与え続けることにより, 小花の開花が促されるとともに, 25℃下でも黒花発生をほぼ抑えることができた.収穫から30%開花までの日数は, 20℃で5日, 25℃で3日程度を要した.また, 開花を促す際に20℃として光強度を15.0W・m^<-2>にまで高めることにより, 切り花品質が向上し, その後水にいけた場合の品質保持期間が延長された.3. 切り花の呼吸速度は温度に対して指数関数的に増加し, 20℃での呼吸速度は約210 μmol CO_2・hr^<-1>・100 gfw^<-1>で, Q_<10>=1.5となった.4. 25℃下で水にいけた切り花の小花では, 20℃下でいけたものに比べて, 2日目および4日目のブドウ糖, 果糖含量が1/2&acd;1/3, ショ糖含量が1/4程度にまで減少していた.また, 25℃下で開花用溶液にいけた切り花では, これら3種類の糖含量が高く推移し, このことが黒花の発生を抑制しているものと考えられた.5. つぼみ切りした切り花は, 出荷段階にまで開花を促した後の品質保持期間を低下させることなく, STS処理後ショ糖溶液による湿式で4週間程度の貯蔵が可能であった.
著者
中尾 義則 平 知明 堀内 昭作 河瀬 憲次 向井 康比己
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.275-280, 2005-07-15
被引用文献数
1

イチョウは雌雄異株であるが, 現在, 雌雄の判別は生殖器官の観察によるしかない.そこで, 染色体における雌雄の違いについて調査した.染色体数は雌雄ともに24本(12対)であった.付随体を持つ染色体の数は, 雄株と雌株それぞれ3本と4本であった.これら付随体の2本はもっとも大きな中部動原体型染色体の短腕にあり, その他の雄株の1本と雌株の2本は次中部動原体型染色体の長腕にあった.CMA染色の結果, 雌雄ともに2本のもっとも大きな中部動原体型染色体の短腕と2本の次中部動原体型染色体の長腕のそれぞれの二次狭窄部に, 合計4か所の黄色いバンドが認められた.5S rDNAと26S-5.8S-18S rDNAをプローブとしたFISH解析で両領域ともに二次狭窄部に位置し, 雌雄間に違いはなかった.また, これらの位置はCMAバンドと同様の場所に検出された.したがって, イチョウの雌雄性の判別は付随体の数によって判別できるが, 5S rDNAと26S-5.8S-18S rDNAをプローブとしたFISHシグナルやCMA染色では判別できないことが明らかとなった.
著者
小原 香 坂本 由佳里 長谷川 治美 河塚 寛 坂本 宏司 早田 保義
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.267-269, 2006-05-15
被引用文献数
1 18

香草のコリアンダー(Coriandrum sativum L.)の異なる成長期における器官別香気成分の変動を検討した.コリアンダーの幼苗期の葉部と茎部のにおいは極めて類似しており,高いパターン類似率を示した.しかしながら,幼苗期の葉茎部と成熟期の葉茎部のパターン類似率は低下し,さらに,幼苗期から成熟期へと成長が進むに従い,葉と茎部の香気は異なるようになり,そのパターン類似率も著しく低下した.また,果実と他の器官におけるパターン類似率の低下は顕著であった.茎葉部の主要香気成分は,油っぽい,甘い,草様の香りを有するdecanal,(E)-2-decenal,(E)-2-undecenal,2-dodecenal,(E)-2-tetradecenalの5成分であり,種子にはほとんど含まれていなかった.また,種子の特徴的香気成分は,花様の爽やかな香りを有するlinaloolやα-pinene,γ-terpinene,D-camphor,geraniolの5成分であり,茎葉部にはほとんど含まれていなかった.茎葉部では,成長が進むに従い,heptanal,(E)-2-hexenalやoctanalの様な青いフレッシュな香気が減少する傾向があり,生茎葉を香草として使用する場合は,コリアンダー特有の青臭い香りだけでなく,フレッシュな香気を併せ持つ幼苗期の茎葉部が適していると判断された.
著者
足立 勝 中林 健一 東 理恵 倉田 裕文 高橋 芳弘 下川 敬之
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.1139-1145, 1999-11-15
被引用文献数
4 7

暗所下においてエチレン処理したカイワレダイコン(Raphanus sativus L.)子葉の脱緑機構を明らかにするために, クロロフィルαの分解を子葉のタンパク質を用いて検討した.粗酵素はエチレンにより脱緑が誘導されたカイワレダイコン子葉から調製した.クロロフィルα分解酵素は, H_2O_2-2, 4-ジクロロフェノール/pクマリン酸依存であった.クロロフィルα分解反応の最初の分解産物はHPLCとHPTLC分析により分析された.その分解産物が標準C-13^2-ヒドロキシルークロロフィルαのRf値/リテンションタイムと同じことよりC-13^2-ヒドロキシルークロロフィルαのRf値/リテンションタイムと同じことよりC-13^2-ヒドロキシルークロロフィルαと同定された.C-13^2-ヒドロキシルークロロフィルα生成反応はアスコルビン酸(2mM)そしてKCN(2mM)の添加により完全に阻害された.しかし, 嫌気性条件下では阻害されなかった.つまり, C-13^2-ヒドロキシルークロロフィルα生成酵素は, H_2O_2を利用した1原子酸素添加反応を触媒するペルオキシゲナーゼまたは, ペルオキシゲナーゼ作用を持つペルオキシダーゼの一種であると考えられる.さらに, 三次元蛍光分光解析により無色の蛍光クロロフィル代謝産物(FCC : Ex 350 nm/Em 455 nm)がクロロフィルαの分解につれて生成されることが明らかとなった.以上の結果よりクロロフィルαはカイワレダイコン子葉より調製したタンパク質により, 以下の反応で分解されることが示唆された.Chl α→C-13^2-HO Chl α→→colorless Rs-FCC(無色の蛍光クロロフィル代謝酸化開環産物).
著者
奥田 均 市ノ木山 浩道 須崎 徳高 平塚 伸 松葉 捷也
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.129-133, 2008-01-15

シートマルチ栽培したウンシュウミカン園などで発生するキク形状を有する果実に対する消費者の嗜好性を評価するため,マルチ栽培で生産されるキク形状を有さない果実(マルチタイプI)とキク形状の果実(マルチタイプII),および露地栽培で生産される果実(露地タイプ)について,16歳以上の309名を対象にアンケートを実施し302名(男127名,女175名)の有効回答を得た.その結果,マルチタイプIIの支持が64.5%で最も高く,マルチタイプI (19.9%),露地タイプ(15.6%)と続いた.選んだ理由には甘み,糖酸のバランスがあげられた.各タイプの支持者を年齢・男女別に分けて支持の特性を分析したところ年齢が高くなるほど女性を中心にマルチタイプを好むことが明らかになった.甘みに対する評価はタイプ支持者間で異なったが,いずれのタイプ支持者も酸に対する評価では差はなかった.形状・外観では露地タイプ,マルチタイプIを支持したグループはマルチタイプIIを劣ると判断したもののマルチタイプIIを支持したグループはタイプ間の差は小さいと判断した.剥皮性についてはいずれのタイプ支持者もマルチタイプIIが劣るとした.本アンケートの結果から供試した3タイプの果実の中ではマルチ栽培により発生したキク形状を有するウンシュウミカン果実の嗜好性が総合的に見て高いことが示唆された.
著者
壇 和弘 大和 陽一 今田 成雄
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.323-328, 2005-09-15
被引用文献数
4 7

光強度および赤色光(R)/遠赤色光(FR)比を変えた光環境がコマツナ(Brassica campestris品種'はるみ小松菜', '楽天')の硝酸イオン濃度および硝酸還元酵素(NR)活性に及ぼす影響について調査した.コマツナは, 異なる光強度(PPFD 165, 290, 350, 510μmol・m^<-2>・sec^<-1>)あるいは異なるR/FR比(1.01: 対照区, 0.66: R抑制区, 1.50: FR抑制区)の光環境下で1/2単位および1単位の培養液を用いて養液栽培した.異なる光強度でコマツナを生育させたところ, 'はるみ小松菜'の硝酸イオン濃度は光強度の増加とともに低下し, 非リン酸化NR活性は光強度の増加とともに高まった.'楽天'では, 1/2単位の培養液を用いた試験区において, 光強度の増加とともに硝酸シオン濃度は低下し, 非リン酸化NR活性は高まったが, 1単位の培養液を用いた試験区では, 光強度が増加しても硝酸イオン濃度はほとんど低下せず, 非リン酸化NR活性も変化しなかった.R/FR比を変えてコマツナを生育させたところ, 1/2単位の培養液を用いたR抑制区でのみ硝酸イオン濃度の低下が認められた.
著者
金好 純子 古田 貴音 蔵尾 公紀 山口 聡
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.5-10, 2008-01-15

カンキツにおいて三倍体育成の交配親となる単胚性四倍体を作出するため,コルヒチン処理した腋芽を接ぎ木する方法により染色体倍数化を行った.その結果,8品種・系統で19個体の四倍体を得た.四倍体が得られた品種・系統は,'大橘','水晶ブンタン','農間紅ハッサク','清見','安芸タンゴール','西之香','ありあけ'および'広島果研11号'であった.作出した四倍体'清見'を種子親として二倍体'大橘'を交配すると,一果実当たりの三倍体獲得数は7.68であり,二倍体'清見'×二倍体'大橘'の0.05,二倍体'清見'×四倍体'大橘'の0.16に比べて,極めて効率よく三倍体が得られた.また,他の単胚性四倍体を種子親とした二倍体との10組み合わせの交配においても,三倍体が効率的に得られ,一果実当たりの三倍体獲得数は,四倍体'ありあけ'では0.47〜0.91,四倍体'日向夏'では2.13〜2.86,四倍体'クレメンティン'では4.25〜6.00,四倍体'清見'では6.79〜11.33であった.この10組み合わせの交配では,主に小粒の完全種子を形成したが,培養すると79.1%が植物体に再生して,そのうち99.8%(487個体)が三倍体であった.
著者
白山 竜次 郡山 啓作
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.357-363, 2014
被引用文献数
6

夏秋ギク5品種および秋ギク5品種を用いて,それぞれの品種の限界日長と効果の高い暗期中断時間帯の関係について調査した.夏秋ギク'フローラル優香','岩の白扇','サザングレープ','サザンチェルシー'および'サザンペガサス'の8月開花における限界日長(暗期長)は,15(9)~16(8)時間で,暗期開始(Dusk)から花芽分化抑制効果の高い時間(NBmax)までの時間(Dusk-NBmax)は,電照時間1時間を加えると6.5~8.5時間であった.一方,秋ギク'神馬','山陽黄金','雪姫','白粋'および'秀芳の力'の12月開花における限界日長(暗期長)は,5品種ともに13(11)時間で,秋ギク5品種のDusk-NBmaxは,電照時間40分を加えると概ね9~10.5時間であった.秋ギクに比較して限界暗期長の短い夏秋ギクはDusk-NBmaxも秋ギクに比較して短かった.これらの結果は,各品種のDusk-NBmaxはそれぞれの限界暗期の長さと連動しており,限界暗期長付近の暗期中断が最も花芽分化に影響を及ぼしていることを示し,個々の品種の限界日長が確認できれば,効果の高い電照時間帯を推定できる可能性を示唆する.
著者
渡辺 慶一 高橋 文次郎 白戸 一士
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.835-840, 1990 (Released:2007-07-05)
参考文献数
19
被引用文献数
9 26

キウイフルーツ (A. deliciosa) の雄性品種‘マチュア’, 雌性品種‘アボット’, ‘ブルーノ’及びマタタビ(A. polygama), サルナシ(A. arguta) を用いて体細胞染色体, 減数分裂について観察調査を行った. キウイフルーツの3品種の体細胞染色体数は2n=174であり, マタタビの2種では2n=58, サルナシの4種では2n=58, 2n=116, 2n=ca. 174と算定された.これらの染色体数から, Actinidia においてはx=29が基本数であることが認められた.サルナシにおいては, 2仁を有する2n=58, 4仁を有する2n=116と仁数は不明確であったが2n=ca. 174の2x, 4x, 6xの倍数関係が示された. 本報のマタタビは2n=58の2倍性であったが, これまでに報告された2n=116の存在を考えると両者の間には, 2xと4xの同質倍数性関係があるのかもしれない. 本研究の2n=174のキウイフルーツの3品種‘マチュア’, ‘アボット’, 及び‘ブルーノ’は体細胞核に6仁または小胞子核で3仁を有し, いずれも基本数x=29の6倍性を示している.
著者
前田 敏 真野 隆司 広田 修
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.521-524, 2007-10-15

葉面散布では散布液が短時間に乾くので,葉は充分に溶液を吸うことが出来ない.葉からの吸収量の増加を目的に散布のかわりに一部の葉を水溶液に浸けて吸収量を計測した.なお,葉からの吸収はアポプラスト吸収であり,試験の単純化のために溶液の代わりに水を用いた.葉面浸漬によって葉からの吸収量は顕著に増加した.また,葉面吸収の原動力の一部は蒸散にあると思われるので,蒸散と葉からの吸水との水分収支を同時測定した.穏やかに晴れた日には,まず蒸散が先行して高まり,吸水が後を追って増加し,夕方には,両者とも急減した.
著者
今野 裕光 桝田 正治 村上 賢治
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.227-234, 2012

トマトの防根給水ひも栽培において,栽培後に肥料袋を除去する「紐上置肥(以下,置肥)」を培地再利用が容易な砂に適用し,生育,収量および養分溶出率について土培地と比較した.また,両培地における混肥と置肥の施肥法の違いについても同様に調査した.供試材料には中玉トマトを用い,第7段摘心栽培とした.栽培期間は,2009年9月~2010年2月の136日間であった.草丈および摘心部の新鮮重・切断直径には,全処理区間で差がなかった.可販果収量は砂と土区間に差はなく,両培地における施肥法間にも差がなかった.砂区の果実は土区より全段位で酸度が低く,高段位でグリーンバック果の発生率が高かった.肥料を栽培後に培地から取り出し分析したところ,total-NおよびK<sub>2</sub>Oの溶出率は80%を超えており,砂区は土区より若干溶出率が低かった.砂区における施肥法間には,溶出率にほとんど差はなかった.一方,見かけの養分吸収量は,特にK<sub>2</sub>Oで少なく,砂区が土区より約4 g低い値を示した.これは元の培地の含有量に依存するものであり,砂区における果実酸度の低下とグリーンバック果の多発に関係していると考えられた.以上より,砂培地の肥料設計は,土培地よりもK<sub>2</sub>Oの肥効を高める必要があると考えられた.<br>
著者
塚越 覚 丸尾 達 伊東 正 扶蘇 秀樹 岡部 勝美
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.1022-1026, 1999-09-15
被引用文献数
1 2

NFT毛管水耕システムを用いたホウレンソウ(Spinacia oleracea L.品種'ジョーカー'および'オリオン')栽培において, 収穫前にNO_3-Nのみの補給停止(実験1 : 夏作), または全肥料成分の補給停止(実験2 : 秋作)が, 生育, 可食部の硝酸含量, 廃液の無機成分濃度に及ぼす影響を検討した.実験1 : 収穫6日前からのNO_3-Nの補給停止で, 可食部の硝酸含量は2, 199 ppm, 廃液のNO_3-N濃度は1.0 me・liter^<-1>と, 食品・廃液の許容基準を満たすことができた.NO_3-N以外の成分は初期濃度と同じか, それ以上に廃液中に残存した.実験2 : 2&acd;6日前からの追肥停止で, 廃液のNO_3-N濃度は0.7 me・liter^<-1>以下, 可食部の硝酸含量は2, 870 ppm以下となり, 食品・廃液の許容基準を満たすことができた.さらに, 他の主要無機成分についても, 残存濃度を低減できた.しかし, 6日前からの追肥停止では, 地上部生体重が低下した.以上より, 夏作で収穫予定日の6日前, 秋作では2&acd;4日前から, 肥料成分を含まない水を補給する方法が, 可食部の硝酸濃度の低いホウレンソウの生産と, 廃液中の主要無機成分含量の低減に有効と考えられた.
著者
増田 大祐 福岡 信之 後藤 秀幸 加納 恭卓
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.597-601, 2007-10-15
参考文献数
16
被引用文献数
1 13

&lsquo;高系14号&rsquo;の甘味の向上を図るため,3,5,10,13℃下で20日間の貯蔵が糖含量や甘味度におよぼす影響を調査した.その結果,スクロース含量は3℃と5℃の貯蔵温度で,グルコース,フルクトース含量は10℃,13℃の貯蔵温度で急速に増加した.また,マルトース含量は処理温度に関係なく,処理後の日数経過に伴って低下した.この結果,蒸しイモの甘味度は5℃と10℃の貯蔵温度で最も高かった.しかし,5℃以下の温度では処理後に腐敗の発生が顕著であったため,短期間で甘味の向上を図るには10℃で貯蔵することが有効と考えられた.<br>
著者
峯村 万貴 泉 克明 山下 裕之 塚原 一幸
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.115-122, 2009-01-15
参考文献数
17
被引用文献数
3

'ナガノパープル'は,長野県果樹試験場において四倍体ブドウの'巨峰'と二倍体ブドウの'ロザリオ ビアンコ'の交雑組み合わせから選抜された三倍体ブドウであり,2004年に種苗法に基づき品種登録された.1990年に交雑し,交雑胚は胚珠・胚培養により養成した.成熟期は育成地で9月上旬(満開後85日頃)である.果房は160~170 g程度の大きさ,果粒は円形で5~6 g程度の大きさであり,果粒の一部に種子の含有が認められる.果皮色は紫黒色である.果皮と果肉の分離は難で,果肉特性は崩壊性である.果汁の甘味は強く,酸含量は少なく,フォクシーフレーバーがある.裂果の発生がみられる.満開時と満開後14日頃の2回のジベレリン処理(25 ppm液)により480~490 g程度の果房と13~14 g程度の果粒が得られ,果粒は完全に無核となる.ジベレリン処理果では無処理果に比べて裂果の発生が少ない傾向であった.花穂の着生は良好であり,短梢剪定による安定的生産が可能と考えられた.<br>
著者
渋谷 俊夫 徳田 綾也子 寺倉 涼子 清水(丸雄) かほり 杉脇 秀美 北宅 善昭 清田 信
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.139-143, 2007-04
被引用文献数
4 13

台木用カボチャ (<i>Cucurbita moschata</i> Duch.) 挿し穂を用いて,低気温貯蔵中におけるボトムヒート処理(BH 処理)温度と処理期間が,貯蔵後の発根および成長に及ぼす影響を調べた.BH 処理温度27–32℃において,挿し木後の発根が最も促進された.挿し木後の根部生体重は,BH 処理期間 0 から24時間までは,処理期間が長くなるにしたがって直線的に大きくなった.BH 処理期間26時間では処理中の挿し穂に発根はみられなかったが,BH 処理期間30時間以上で発根がみられた.挿し木による根への損傷による根の生育遅延を避けるために BH 処理は発根直前で終了することが望ましいと考えられることから,最適 BH 処理時間は26–30時間と判断された.接ぎ木苗生産における BH 処理の実用性を検討するために,BH 処理と無処理のカボチャ台木挿し穂にキュウリ (<i>Cucumis sativus</i> L.) 穂木を接ぎ木し,それらを挿し木して育成した.BH 処理条件は気温 9℃,処理温度30℃,処理時間24時間とした.全生体重および根部生体重は挿し木 6 日後において,BH 処理した挿し穂から得られた接ぎ木植物では,処理しなかったもののそれぞれ1.3倍および4.0倍となった.BH 処理による台木挿し穂の発根促進効果は,接ぎ木後さらに 7 日間低温貯蔵しても維持された.<br>
著者
山口 訓史 後藤 丹十郎 大谷 翔子 安場 健一郎 田中 義行 吉田 裕一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.261-266, 2015

生育段階の異なるシュートに対する温度条件がシュッコンカスミソウ'アルタイル'の形態異常花序発生に及ぼす影響を検討した.シュート長20 cmから2週間15°Cに加温することで,8週間15°Cに加温した場合と同様に,形態異常花序発生が軽減された.2週間加温した個体の切り花長と切り花重は,8週間加温した個体よりも大きくなった.形態異常花序が発生するシュート長と頂芽における花芽分化段階との関係を調べたところ,頂芽のステージが栄養成長からがく片形成期に当たるシュート長が約1~20 cmから15日間の15°C加温で最も形態異常花序が抑制できた.形態異常花序に及ぼす低温の影響を明確にするため,異なる生育段階に対する低温遭遇(7°C)が形態異常花序発生に及ぼす影響を調査した.異なる生育段階に高温(15°C)に遭遇させた実験と同様に,頂芽のステージが栄養成長からがく片形成期までの低温遭遇が形態異常花序発生に大きく関与していた.以上のことから,摘心直後からがく片形成期の期間,株を低温に遭遇させないように温度管理することで,形態異常花序の発生を抑制でき,切り花形質も改善できると考えられた.
著者
大江 孝明 櫻井 直樹 山崎 哲弘 奥井 弥生 石原 紀恵 岡室 美絵子 細平 正人
出版者
園芸学会
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.273-279, 2012 (Released:2013-10-08)

ウメ果実の追熟条件の違いが梅酒中の香気成分および苦み成分に及ぼす影響について調査した。におい嗅ぎ分析により,熟した果実を原料とした梅酒の芳香香気に関与する成分の一部がγ-デカラクトン,δ-デカラクトン,酪酸エチル,酢酸ブチルであると判断された。これら芳香香気成分量は,より収穫を遅らせた果実を用いた方が多く,原料果実を20℃で4日,30℃で3日追熟すると高まった。梅酒の青っぽい香気に関与する成分と判断された安息香酸エチルは,20℃では5日以内,30および35℃では3日以内の追熟により,収穫直後に漬けた場合と比べて同程度かそれ以下で推移した。また,苦みに関与するプルナシンおよびシュウ酸含量は20℃で4日,30℃で3日追熟すると減少した。以上のことから,原料果実の収穫時期や貯蔵条件により梅酒加工品の香気成分および苦み成分が大きく変わることが確認され,芳香香気を高め,青っぽい香気成分や苦み成分を抑えるためには,より熟した果実を収穫して,20℃で4日もしくは30℃で3日追熟させてから加工するのが良いと考えられた。
著者
佐々木 厚 吉村 正久 鈴木 誠一 森山 厳與 金浜 耕基
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.187-194, 2013
被引用文献数
2

赤色電球形蛍光ランプによる暗期中断時間と光強度がスプレーギクの開花と花房の形状に及ぼす影響について,秋ギク'ゴールドストックダークリネカー'および夏秋ギク'コイアローム'を用いて調べた.光源として,市販の白熱電球(対照光源,75 W)および660 nmの波長をピークにもち,赤色光を多く含む赤色電球形蛍光ランプ(21 W,試作品)を用いた.その結果,いずれの品種とも,商品価値の高い整った花房の形状を示す花芽分化抑制可能な光合成有効光量子束密度(PPFD)の下限値は,同じ暗期中断時間で比較すると,赤色電球形蛍光ランプを使用した場合に白熱電球を使用した場合より低かった.秋ギク品種では,赤色電球形蛍光ランプを使用して1時間の暗期中断を行った場合,花芽分化抑制可能なPPFDの下限値が示されたが,白熱電球を使用した場合では示されなかった.さらに,いずれの品種においても,赤色電球形蛍光ランプを使用した場合の花芽分化抑制可能なPPFDの下限値と,これに対応する暗期中断時間の積の値がほぼ一定になったことから,花芽分化抑制可能なPPFDの下限値と暗期中断時間は反比例の関係にあり,ブンセン-ロスコーの相反則が成り立っていると考えられた.<br>