著者
西川 星也 高松 敦子
出版者
金原一郎記念医学医療振興財団
巻号頁・発行日
pp.155-158, 2016-04-15

細胞競合は主に上皮組織でみられる現象で,組織の一部に変異細胞が誘導されると,正常細胞との境界で競合が起こり,最終的に変異細胞が組織から排除される(図1A-図1C)。変異細胞が正常細胞に取り囲まれると,細胞死や排出が引き起こされることが観察されている。排除の結果,空いた空間には正常細胞が増殖し,それによって正常な組織サイズを維持すると言われている。このことから細胞競合現象は,正常な発生,組織の維持などに重要な役割を果たすと考えられている。 細胞競合は最初,ショウジョウバエ翅成虫原基にMinute変異細胞クローンを誘導した系で発見された1)。Minuteはリボソームタンパク質関連の遺伝子であり,そのヘテロ変異個体は単独でも生存可能で,正常サイズの翅を形成する(図1B)。しかし,成長の速さが正常個体に比較して遅いことから,細胞競合の結果,どちらの細胞群が生き残るかという勝敗の運命は,成長速度の相対値によって決まると考えられた。