著者
西村 宣彦
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.296-314, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
28

2007年3月に財政再建団体に移行した夕張市は,本稿執筆時点で財政再建第2年度目にある。財政再建初年度は当初計画通りの赤字解消を達成したが,今後に目を向けると,夕張市の財政再建計画は,①現実性,②地域の将来ヴィジョンの欠如,③負担配分の公正性という3つの問題点を抱えている。3点目は(a)人口流出に係わる問題と,(b)不適正な赤字隠しへの道・国の関与の問題に区別される。目先の赤字解消に止まらず,地域と自治の再生を図っていくためには,これらの諸点と向き合う必要があり,そのためには夕張市に現在課されている「過剰な自己責任」を是正し,夕張市の責任で解消すべき赤字額の大幅な減額を含めて,計画の抜本変更を行うべきだと考える。こうした主張に対しては,モラル・ハザードの助長や他の地方自治体との不公平といった異論が出ることが予想されるが,夕張市の事例では必ずしもそうした指摘は当てはまらないことを指摘する。