著者
西村 芳樹
出版者
日本植物形態学会
雑誌
PLANT MORPHOLOGY (ISSN:09189726)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.11-16, 2011 (Released:2012-03-27)
参考文献数
26

ミトコンドリア(mt)や葉緑体(cp)の遺伝子は多くの生物において母親のみから遺伝する(母性遺伝).これまで母性遺伝は,父母の配偶子(精子・卵子)の大きさが異なり,mt/cpDNA量に差があることが原因と考えられてきた.これに対し,雌雄同形の配偶子で生殖をおこなう単細胞緑藻クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)では,接合後60分以内に雄の葉緑体(cp)DNAが積極的に分解されることで母性遺伝が引き起こされる.本レビューでは,この雄葉緑体DNAの急激かつ選択的な分解を明らかにしてきた生化学,細胞学,顕微分子生物学的研究の数々について俯瞰し,さらに母性遺伝の分子機構に迫りつつある遺伝学的な挑戦について述べる.