著者
西海 信 吉田 優
出版者
日本プロテオーム学会
雑誌
日本プロテオーム学会誌 (ISSN:24322776)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.45-53, 2020 (Released:2020-12-15)
参考文献数
37

メタボロミクスとは,生体内に存在する低分子代謝物を網羅的に分析する技術のことで,メタボローム解析とも呼ばれる.ガスクロマトグラフ質量分析計や液体クロマトグラフ質量分析計などの質量分析計を用いた代謝物分析手法の開発,改良が進むにつれ,様々な種類の代謝物が分析できるようになり,また,より低濃度の代謝物も検出できるようになってきた.そして,近年では,メタボロミクス研究が食品分野,植物分野,微生物分野,医学分野など様々な研究分野で活用されている.医学研究分野では,メタボロミクスがバイオマーカー研究に活用されることが非常に多い.バイオマーカー研究では,血液や尿などの体液や組織が分析対象試料とされ,その中でも血液が分析対象になることが多いものの,血中代謝物分析において,その分析結果に影響を与える様々な要因が,近年,報告されている.これらの要因は,代謝物分析前の検体収集や検体前処理,代謝物分析,分析後データ処理の各プロセスに存在しており,この要因を明らかにすることは,メタボロミクス研究の実用化に向けて非常に重要である.本総説では,この血中代謝物分析に影響を与える要因について概説する.