著者
西澤 萌希
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.21-38, 2022-12-31 (Released:2022-12-31)
参考文献数
15

日本語の自称詞には男性語、女性語とされる語があり、特定の自称詞を用いた発話は特定の性別の人物像と結びつく。しかしそれとは別に、例えば同じ男性語自称詞ボク、オレでも結びつく人物像の男性性の強弱が異なる、といった現象がある。この現象を説明するため、本稿は少年マンガのセリフの観察を通し、男性語の自称詞オレ、ボク、女性語の自称詞ワタシ、アタシを使用する人物の言葉づかいの特徴を分析し、類似性や相違性を明らかにする。分析の結果、男性語自称詞オレ、ボクの使用者と女性語自称詞ワタシ、アタシの使用者で言葉づかいに部分的な類似性が認められた。またオレ使用者とボク使用者では、言葉づかいにおいて女性語自称詞の使用者とどの程度類似するかが異なり、ワタシ使用者とアタシ使用者でも男性語自称詞の使用者とどの程度類似するかが異なることが明らかとなった。そのような類似性の異なりが前述の現象の一要因になっていると考察した。