著者
池田 かよ子 半藤 保 西脇 友子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.91-100, 2011-04
被引用文献数
1

思春期以降の母性準備期にある女子と携帯電話などの電子メディアの使用状況と疲労との関連を包括的にとらえた研究は見あたらない。この研究の目的は,思春期女子における携帯電話などの電子メディアの使用状況と疲労度および疲労自覚症状との関連を明らかにすることである。2009年4〜7月に信越地方の共学の私立高等学校の1年生女子217人を対象に,高校入学時の定期健康診断の時期に合わせて,面接により携帯電話などの電子メディアの使用状況,疲労自覚症状の聞き取り調査とフリッカー測定器による疲労度の測定を行った。その結果は以下のようである。1.携帯電話やゲーム,パソコン,テレビなどの電子メディア全体に接触している時間は1日平均9時間であり,そのうち携帯電話の平均使用時間は4.8時間であった。2.メールの1日平均送受信回数は118.7回であった。3.携帯電話,メール,電子メディアを量的に2群に分け,疲労自覚症状との関連についてみると,携帯電話の1日使用時間が5時間以上のほうに,またメールの1日送受信回数が120回以上のほうに,さらに電子メディアの暴露時間が10時間以上のほうに有意な関連があり,共通していた疲労自覚症状は,「きちんとしていられない」「めまいがする」の2項目であった。その他の症状としては「全身がだるい」「ねむい」「気が散る」「物事に熱心になれない」「瞼や筋肉がピクピクする」であった。以上より,最近の高校生は,携帯電話を代表とする電子メディアに多く接触しており,長時間の使用により身体のどこかに疲労が生じていることが示唆された。