著者
西野 勇人
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.175-194, 2021-05-31 (Released:2022-07-02)
参考文献数
33

本研究の目的は,高齢の親に対する子世代からの実践的援助がどのようなパターンを形成しているかを明らかにすることである.特に,子世代の誰がケアを担いやすいのか,公的介護サービスの利用は子世代からのケアの内容とどう関連しているのか,という2 点を掘り下げる.分析には「全国高齢者パネル調査」(JAHEAD)のデータを用い,回答者と子世代からなるダイアドデータを作成した.分析においては,「援助なし」「身体的介護を提供」「家事・生活的援助のみ提供」という3 つのカテゴリをアウトカムとしたマルチレベル多項ロジスティック回帰モデルによる推定を行った.分析の結果,回答者からみた続柄では,娘によるケア提供の確率が高かった.また,親の性別の効果は,2 つのアウトカムで異なっていた.父親と比べ母親に対しては,子世代は身体的介護を提供する確率が低く,また家事・生活的援助のみを提供する確率が高いことが示された.次に,タスク別に分けると,身体的なケアの提供確率に対しては在宅の公的介護サービスの利用が正の相関を持っていたが,家事・生活的援助のみを提供する確率に対しては公的サービスは明確な効果が確認できなかった.