著者
西野 範子
出版者
関西大学文化交渉学教育研究拠点(ICIS)
雑誌
周縁の文化交渉学シリーズ1 『東アジアの茶飲文化と茶業』
巻号頁・発行日
pp.163-200, 2011-03-31

ベトナムの窯業村で生産された陶磁器が日本に渡り、茶道という文化的脈略の中で使用された。所謂「安南」と呼ばれるそれらのベトナム陶磁器は、日本において今でも大切に伝世されており、近年では、伝世ベトナム茶陶と同類の陶磁器が発掘調査により出土している。 伝世茶陶および出土資料を包括的に分類し、筆者と西村昌也のベトナム陶磁の分類と編年研究(2005)から、生産年代を比定した。その結果、ベトナム産茶陶の生産年代を、 14世紀、15世紀、16世紀前半、16世紀後半(第3 四半期と第4 四半期)、17世紀前期に分期し、各時期に関する茶陶がもたらされた国際交易の背景について明らかにした。また、朱印船貿易時代には、日本からベトナムへの注文生産が行われていたことが確実で、注文生産の仲介役に、和田理左衛門が関わった可能性ついて文献史と考古学的視点から論証した。