著者
角田 力弥 中村 直哉
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

我々は科研費の助成を受けて、濾胞樹状細胞(FDC)の新規機能的マーカー:胚中心Bリンパ球(GCB)のEmperipolesis能を発見し、FDCはこの密接な細胞相互作用を介してGCBのアポトーシス感受性を変動させ、そのセレクションにも積極的に関与していると報告してきた。今回はこの研究をさらに発展させ、FDCはに再発現するRAG-1&RAG-2も制御している可能性を検索した。ただ、研究を始めてまもなく、改めてRAG-1&RAG-2が成熟Bリンパ球に特異的に再発現する事自体が疑問視されるようになり、我々の研究も依然として推敲を重ねている途中であるが、これまでの成績からいえることは、(1)ヒト扁桃の成熟Bリンパ球に明瞭なRAG-1&RAG-2の発現はない。(2)それをrIL-4/CD40で活性化させるとRAG-1&RA6-2の発現がで時折観察される。(3)しかし、FDCに包み込まれた分画Bリンパ球に発現の有意義な変動はなかった。(4)29例のB細胞腫瘍株でのRAG-1&RAG-2の発現をサーベイすると、Follicular lymphomaのほとんど(3/3)とDiffuse large B cell lymphomaの亜群(centroblastic 1/9,T cell/histiocyte-rich 5/7)にメッセージが確認された(中村ら、発表)。以上のことから、FDCは胚中心のRAG-1&RAG-2発現現象に積極的に関与していないらしい。ただ、B細胞腫瘍株での検索ではRAG-1&RAG-2発現が胚中心成熟段階と関連深いことを改めて示唆しているので、意義についてはさらに現在の検出実験系の感度を上げたり、その他の遺伝子発現との総合的な検討をくわえた研究を続け、将来に成果を発表したい。