- 著者
-
角田 燎
- 出版者
- 関西社会学会
- 雑誌
- フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, pp.30-44, 2022 (Released:2023-06-08)
- 参考文献数
- 20
本稿は、戦後派世代の旧軍関係者団体への参加と、そこで生じた「歴史修正主義」の台頭を、陸軍士官の親睦組織である偕行社を事例に明らかにする。先行研究では、旧軍関係者団体の戦後派世代への「継承」の困難さが指摘されている。しかし、偕行社のように現在まで存続している団体もある。本稿では、偕行社がどのようにして困難さを乗り越え存続したのかを会内の「歴史修正主義」の台頭や、自衛官OBの参加に注目して分析する。親睦組織として発展した偕行社では、「陸軍の反省」が求められていた。しかし、1990年代後半になると「自虐史観」への反発が強まり、会内で「歴史修正主義」が台頭した。同時期には、会の資産と将来について、激しい議論が展開された。そうした対立を孕みつつも、最終的に自衛官OBを後継者として迎え入れ、「英霊」の永続的奉賛のため、会は存続することとなる。この背景として、会の「政治化」と「歴史修正主義」があった。会の「政治化」は、「歴史修正主義」の影響を受け「自虐史観」の打破を目指す戦争体験世代にも、陸自の支援や防衛に関する政策提言を目指す自衛官OBにも許容可能なものであった。それぞれの「政治化」の方向性は異なったが、政治団体化という大きな目標自体は同じだった。政治的中立を謳った偕行社という旧軍関係者の親睦団体は、戦後世代を受け入れ、政治団体と形を変えることで、現在まで存続することになったのである。