著者
染谷 信孝 諸星 知広 吉田 重信
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.16-25, 2022-04-30 (Released:2022-04-30)

Bt 菌,Bacillus thuringiensis は,昆虫の病原菌として見出され,現在,日本および世界で最も利用されている生物殺虫剤である。近年,Bt 菌には殺虫効果に加えて,病害抑制効果,植物生育促進効果および環境浄化能なども有していることが分かってきた。今後,Bt 菌を有効成分とするBT 剤を殺虫剤のみならず,多用途資材としての利用拡大が期待される。本稿では,近年のBt 菌そしてBT 剤についての近年の研究動向と将来展望を紹介する。
著者
染谷信孝 澤田宏之 濱本 宏 諸星知広
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.66-76, 2020 (Released:2020-10-31)

軟腐病は,土壌伝染性の多犯性細菌病である。植物組織を軟化腐敗させ,その際には独特の臭気を伴う。我が国では主に野菜類の主産地で問題となり,気象条件によってしばしば大きな被害を生じる。病原細菌種は主にPectobacterium carotovorumおよびその亜種とされてきたが,近年の分類体系の変遷から,現在では10 種以上が軟腐病の病原となることが分かってきた。我が国において過去に軟腐病の病原として分離・同定されてきた細菌株についても,P. carotovorum以外の種が混在している可能性がある。本病は土壌,灌漑水など様々な環境中に存在し,宿主植物の周辺で急激に増殖し,一定密度を越えると発病に至る。本病の防除は,銅剤や抗生物質などによる化学的防除が基本となるが,生物農薬の普及も進みつつある。近年の研究成果を活用した,農業現場での迅速な病原細菌の検出技術および新規防除技術開発が期待されている。