著者
謝 文慧
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.199-208, 1999-12-31

本研究では, 新入幼稚園児の移行過程において, 安定した友だちや, 「仲良し」や「親友」といった親密度の異なる友だち関係がいつ, どのように形成されていくのか, また, 「入園前の知り合い」や「入園前の友だち」が移行過程にどのような影響を及ぼすのかについて究明することを目的とした。4歳児8名 (男児4名, 女児4名) の白由遊び時間における幼児間の交渉を, 4月の入園時から10月中句まで6期に分けて観察した。観察内容は, 対象児と交渉を行った相手の名前, その相手との交渉回数, 交渉持続時間であった。各対象児の社会的ネットワークでの連続交渉回数と延べ交渉時問を検討し, 安定した友だち関係, 仲良し関係と親友関係は, 6月から7月中旬にかけて (入園後1カ月半から3カ月) 形成され, さらに, 親友関係は10月にまで持続されることが明らかとなった。「入園前の知り合い関係」や「入園前の友だち関係」は移行初期においていずれも新入幼稚園児の社会的ネットワークに影響していた。しかし, 長期的には「入園前の友だち関係」のほうがより強い影響を及ぼしていた。