著者
山崎 章 河島 長義 谷口 智通 中川 隆
出版者
関西医大誌
雑誌
関西医科大学雑誌 (ISSN:00228400)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.453-460, 1978

心電図は他の循環器系検査にくらべ操作が簡単で,一般臨床における親近感もつよく,またその解読で得られる情報の利用価値は高い.ことに危険な虚血性心疾患や不整脈の診断治療には欠くことのできないものであり,日常検査法のひとつとして手術適応の決定や手術後経過の管理にも用いられている.もちろん,心電図所見のみでは臨床状態の把握は不可能であり,他の系統的な検査結果とあわせて判断しなければならない.<BR>一方,実施臨床上,手術前後に危険な不整脈に遭遇した際には,その成因の解明とともに適切な処置が必要とされる,しかし,一般病院における手術後管理の大部分は一部の心電図専門家の取り扱いから離れることも多く,外科領域でも不整脈に対する原因対策および応急処置の必要な状態も生じてくる.開胸手術ばかりでなく,開腹手衛においても不整脈の発生することはよく知られており,種々の集計的報告も少なくない.しかしながら個々の症例をとうし,その臨床経過および発生過程をかえりみることもあながち無意味とは思われない.最近,われわれは泌尿器科手術後に著明な不整脈の発生した3例を経験したので報告するとともに,若干の文献的考察を加える.