著者
谷口 正一郎
出版者
日本ベンチャー学会
雑誌
日本ベンチャー学会誌 (ISSN:18834949)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.79-93, 2022-03-15 (Released:2023-04-26)

本論文は、大企業がベンチャー企業と協同して事業創造に取り組むコーポレート・アクセラレーター・プログラムのプロセスを明らかにすることを目的とする。コーポレートベンチャリングの先行研究が提示した分析枠組みを援用し、森永製菓株式会社を対象とした事例分析を行った。大企業が、コーポレート・アクセラレーター・プログラムを導入した結果、提携を擁護する新たな組織コンテキストが形成され、ベンチャー企業との事業創造を促す。しかし他方では、事業創造に対する淘汰圧も生じるのである。これらを解消するためには、トップマネジメ ントのサポートのみならず、部門間交渉や利害調整が必要となる。さらに、組織メンバーが、CAPの目的を満たすために、事後的に事業創造を作り込み、多様な成果に結実する可能性を見出した。本論文は、これらの発見事実を通じて、事例企業におけるコーポレート・アクセラレーター・プログラムのプロセスを提示した。