著者
佐古 勇 谷口 達雄 尾崎 武司 井上 忠男
出版者
The Kansai Plant Protection Society
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.21-27, 1990
被引用文献数
1

ネギ属植物に潜在感染し, 広く発生分布しているGLVの発生生態解明の一環として伝染方法などについて2, 3の実験を行った.<BR>1. 鳥取県下のラッキョウ畑におけるアブラムシ類の飛来は4月中旬頃から見られ, 5月になると急激に増加し, 5月下旬までその傾向は続いた. その後の飛来は夏季をピークに9月にはしだいに減少したが, 10月下旬まで持続した. 最も飛来数の多かったのはモモアカアブラムシで, 次いでワタアブラムシであった.<BR>2. GLVはモモアカアブラムシによりワケギ, ネギ及びラッキョウの保毒株での5~60分間の獲得吸汁,ラッキョウでの10~60分間の接種吸汁により10~20%の割合で伝搬が確認された. また, ネギァブラムシによってもネギ及びラッキョウの保毒株からラッキョウに10~30%の割合で伝搬された.<BR>3. ラッキョウ畑でのGLVの株の接触による伝染及びソラマメでの種子伝染は認められなかった.<BR>4. ラッキョウ産地においてウイルスフリー株を植え付けると, 再感染株率は植え付け当年の秋季には平均26.7%, 翌春には平均50.0%と高率となったが, 寒冷紗トンネル被覆により再感染が防止された.<BR>5. 種苗伝染試験では, 当代感染した株に形成される新分球のGLVの保毒率は20~69%であったが, 当代感染株からの保毒球を種球として栽培した株に形成される新分球の保毒率は100%となった. また, 在来保毒株からの分球もGLVを100%保毒していた. <BR>6. ELISA法によりりん茎部位別のウイルス濃度を比較すると, 外部より芯部の, また下部より上部のりん葉のウイルス濃度が高かった. しかし, 当代感染株と在来保毒株では全体に前者のウイルス濃度が低い傾向があり, 種苗伝染はりん茎のウイルス濃度との関係が示唆された.