著者
小澤 朗人
出版者
The Kansai Plant Protection Society
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.41-45, 2012 (Released:2012-09-01)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

ササゲ(ジュウロクササゲ)の花外蜜腺を訪問するアリと莢果を吸汁加害するカメムシの動態を調査し,ササゲのアリを介したカメムシに対する防御機能について評価した。ササゲの莢果長と訪問アリ数との間には相関は認められず,ササゲの花外蜜腺は莢果のステージにかかわらずアリを誘引した。訪問アリの種類はクロヤマアリとアミメアリの2種で,クロヤマアリが優占種であった。また,莢果に寄生するカメムシはチャバネアオカメムシ,クサギカメムシ,ホソヘリカメムシの3種であった。花外蜜腺に訪問するクロヤマアリと莢果に寄生するカメムシの日周活動を調べた結果,アリの訪問は日中に,カメムシの寄生は夜間に多くなり,訪問アリがいる場合のカメムシの寄生頻度はアリがいない場合の約1/3であった。アリを人為的に除去すると,日中でも夜間においてもカメムシの寄生数は無処理区に比べて多くなった。これらの結果から,ササゲは花外蜜腺を訪問するクロヤマアリを介して間接的にカメムシに対する防御機能を有しているものの,その効果はクロヤマアリの日周活動に依存し,夜間には低下することが示唆された。
著者
森田 剛成 原 敬和 見世 大作 軸丸 祥大
出版者
The Kansai Plant Protection Society
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.29-34, 2012 (Released:2012-09-01)
参考文献数
14
被引用文献数
12 7

広島県尾道市浦崎地区のイチジク圃場(14圃場)において,キクイムシが関与した本病の拡大と土壌の病原菌汚染の推移を調査した。2006年の初発以降,地域内におけるキクイムシの加害圃場率および本病による枯死樹発生圃場率が徐々に増加し,2010年には64.2%および21.4%にそれぞれ達した。圃場内の加害樹率および枯死樹率はキクイムシの加害初発から増加し,3年から4年後には,最大で87.8%および45.2%にそれぞれ達していた。キクイムシに加害された全ての樹では加害履歴に関係なく,木部から病原菌が検出された。また,キクイムシに加害されたイチジク樹の株元周辺土壌では,病原菌が検出される確率が高かった。一方,キクイムシが加害していない樹の木部や株元周辺土壌からは病原菌が検出されなかった。別の室内実験により,広島県のキクイムシ個体群は病原菌を保持しており,キクイムシの孔道由来のフラスから病原菌が検出されることが示された。これらの結果から,キクイムシが介在する場合,本病が激害化することが本研究で示された。今後は,各イチジク産地において本病の侵入経路をキクイムシに注目して確認するとともに,キクイムシの駆除を目的とした防除技術の開発が必要である。
著者
松村 美小夜 中野 智彦 小野 大吾 福井 俊男
出版者
The Kansai Plant Protection Society
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.1-8, 2005 (Released:2011-09-12)
参考文献数
8
被引用文献数
5 5

ホウレンソウケナガコナダニに対する数種土壌消毒法の効果を調査した。太陽熱消毒,蒸気消毒,熱水消毒,土壌還元消毒のいずれも土壌中のコナダニに対する防除効果は高かった。しかし,場合によっては処理時の地温上昇のむらによるハウス内でのコナダニの残存が生じたり,処理されていないハウス周辺部分でのコナダニの残存があり,長期にわたる防除効果の持続は期待できないと考えられた。経済性や実用性の面から,春期や秋期のコナダニ増加前の処理や多発時の緊急的な防除として,蒸気消毒の短時間処理の普及性が高いと思われた。
著者
細見 彰洋 瓦谷 光男
出版者
The Kansai Plant Protection Society
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.29-32, 2004 (Released:2011-09-12)
参考文献数
10
被引用文献数
8 6

いや地対策として選抜され,台木としての利用が普及しつつあるイチジク‘Zidi’や‘King’について,イチジク株枯病抵抗性の強度を明らかにするため,抵抗性が強いとされる‘Celeste’と,抵抗性が弱く本病の被害が問題になっている主要品種‘桝井ドーフィン’との間で抵抗性の比較を行った。1. 予めPDA培地で前培養し,培地ごと直径5mmに打ち抜いた株枯病菌Ceratocystis fimbriata の菌そうを直径8cmに切った供試品種の葉片に付傷接種した。その結果,接種部位からの病斑の広がりは‘Celeste’で遅く,‘King’や‘桝井ドーフィン’で速く,‘Zidi’はその中間にあった。2. 予めPDA培地で培養したC. fimbriata の菌そうを,培地ごとミキサーで粉砕して蒸留水に懸濁し,供試ポット苗の用土にかん注接種した。その結果,何れの品種においても病斑が形成され,C. fimbriata が再分離された。但し,‘Celeste’は接種後90日間ほとんど枯れなかったのに対し,‘Zidi’や‘King’は‘桝井ドーフィン’と同様に62%~89%の苗が枯死した。以上の結果から,いや地対策の台木として開発されたイチジク品種のイチジク株枯病抵抗性は,明らかに‘Celeste’より弱く,これらの台木を使った栽培においても,本病に対する注意が必要と考えられた。
著者
佐古 勇 谷口 達雄 尾崎 武司 井上 忠男
出版者
The Kansai Plant Protection Society
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.21-27, 1990
被引用文献数
1

ネギ属植物に潜在感染し, 広く発生分布しているGLVの発生生態解明の一環として伝染方法などについて2, 3の実験を行った.<BR>1. 鳥取県下のラッキョウ畑におけるアブラムシ類の飛来は4月中旬頃から見られ, 5月になると急激に増加し, 5月下旬までその傾向は続いた. その後の飛来は夏季をピークに9月にはしだいに減少したが, 10月下旬まで持続した. 最も飛来数の多かったのはモモアカアブラムシで, 次いでワタアブラムシであった.<BR>2. GLVはモモアカアブラムシによりワケギ, ネギ及びラッキョウの保毒株での5~60分間の獲得吸汁,ラッキョウでの10~60分間の接種吸汁により10~20%の割合で伝搬が確認された. また, ネギァブラムシによってもネギ及びラッキョウの保毒株からラッキョウに10~30%の割合で伝搬された.<BR>3. ラッキョウ畑でのGLVの株の接触による伝染及びソラマメでの種子伝染は認められなかった.<BR>4. ラッキョウ産地においてウイルスフリー株を植え付けると, 再感染株率は植え付け当年の秋季には平均26.7%, 翌春には平均50.0%と高率となったが, 寒冷紗トンネル被覆により再感染が防止された.<BR>5. 種苗伝染試験では, 当代感染した株に形成される新分球のGLVの保毒率は20~69%であったが, 当代感染株からの保毒球を種球として栽培した株に形成される新分球の保毒率は100%となった. また, 在来保毒株からの分球もGLVを100%保毒していた. <BR>6. ELISA法によりりん茎部位別のウイルス濃度を比較すると, 外部より芯部の, また下部より上部のりん葉のウイルス濃度が高かった. しかし, 当代感染株と在来保毒株では全体に前者のウイルス濃度が低い傾向があり, 種苗伝染はりん茎のウイルス濃度との関係が示唆された.
著者
石井 実
出版者
The Kansai Plant Protection Society
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.61-62, 1993

Last-instar larvae of the bamboo zygaenid, <I>Balataea huneralis</I> were collected in Kyoto city in early December, 1984 and reared under 16- and 12-hour photoperiodic conditions of 20&deg;C. Results of the experiments strongly suggested that this zygaenid passes the winer in diapausing prepupae in Kyoto city.
著者
田口 裕美 鈴木 啓史 黒田 克利
出版者
The Kansai Plant Protection Society
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.53-59, 2012 (Released:2012-09-01)
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

イチゴ炭疽病に登録されている12種類の殺菌剤をイチゴ苗に散布した後菌接種し,その防除効果から有効な殺菌剤を選抜した。2010年,2011年のイチゴ苗接種試験の殺菌剤散布7日後菌接種で,マンゼブ,プロピネブ,キャプタンの防除効果が高かった。さらに,2010年はアゾキシストロビンと有機銅が,2011年はフルジオキソニルの防除効果が高かった。一方,殺菌剤散布10日後菌接種で効果の高い殺菌剤はフルジオキソニルのみであった。 圃場試験の結果,マンゼブ,プロピネブ,キャプタン,有機銅の7日間隔の防除体系が,最も効果が高く,さらに27日後の枯死株率も7日間隔が最も低かった。 以上の結果から,イチゴ炭疽病に対する防除体系は,マンゼブ,プロピネブ,キャプタンを中心に7日間隔でローテーションを組み,有機銅,フルジオキソニルを臨機防除とすることが有効と考えられた。