著者
坂東 忠司 谷川 幸江 櫻井 真由美
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.85-99, 2001-03-31
被引用文献数
1

巨椋池干拓地の植物相を調査し,404種を確認した。干拓前に報告されている167種のうち91種はすでに見られなくなったが,残る76種は現在も生育していることが明らかとなった。この70年間に植物の種数は2.4倍に増加したが,これは干拓地の乾燥化によって水分環境が多様化したことに加え,鳥を中心とした動物や道路建設に伴う客土,あるいは耕作に伴う種子の持ち込みなどに起因するものと考えられる。中でもキク科,マメ科,イネ科のように,多くの帰化種を含む分類群の増加が著しい。現在,巨椋池干拓地およびその周辺の環境は加速度的に変化しつつある。現在の植物相を記録しておくことは,今後の環境変遷を考える上で重要な基礎資料となるものと思われる。