著者
谷川 明希子 片山 寛次
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.147-152, 2018 (Released:2018-04-18)
参考文献数
21

強オピオイドは癌性疼痛に有用であり,副作用は悪心・嘔吐,眠気,便秘等が知られ,過量投与では呼吸抑制や意識障害をきたす.今回,強オピオイド開始直後に悪心と羞明,少量で意識障害と縮瞳をきたした症例を経験した.79歳男性が肝細胞癌stage IVBで肋骨転移あり,癌性疼痛を認めた.除痛のための強オピオイド開始直後に強い悪心と羞明を認めた.オキシコドン塩酸塩水和物は強い悪心で中止し,モルヒネ硫酸塩水和物は羞明で中止した.フェンタニル貼付製剤は1 mgで一過性の健忘,2 mgで縮瞳と意識障害を認め,中止した.呼吸抑制は認めなかった.強オピオイドは羞明もきたしうる.少量でも縮瞳や意識障害をきたす症例もある.強オピオイド開始時に強い副作用や羞明を認めた場合には,少量でも縮瞳や意識障害をきたす可能性があり,注意した観察が必要である.