著者
谷田部 淳一
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

【目的】γ-アミノ酪酸(GABA)による水利尿の作用機序は不明であった。GABAB受容体はGi/oと共役する7回膜貫通型受容体であり、Gsと共役するバゾプレッシン(AVP)V2受容体(V2R)の機能に拮抗する可能性を検討した。また、GABA系を賦活するとの報告があるリジンの関与について調べた。【方法】ラット腎組織とアクアポリン2(AQP2)安定発現MDCK細胞を用いた。RT-PCR、Western blot、免疫染色法を実施した。cAMPはHTRF法にて定量した。血漿中リジン濃度、糞便中リジン濃度は質量分析法にて定量した。【結果】腎組織とMDCK細胞には、GABABR1・R2サブユニットmRNAが発現していた。集合管主細胞に、GABABR2とAQP2の共発現像が見られた。MDCK細胞をAVPやforskolinで刺激した際に上昇する細胞内cAMP濃度は、GABAやGABAB受容体の特異的アゴニストであるbaclofenによる前処置にて有意に抑制された。AVPはAQP2のリン酸化を時間依存的、用量依存的に惹起したが、baclofenはそのリン酸化を有意に抑制した。高血圧自然発症ラットにおいて、体内リジン濃度の低下が見られた。【結論】GABAB受容体刺激は、集合管におけるcAMPの産生を低下させ、引き続くAQP2の活性化を抑制した。GABAによる水利尿のメカニズムは、AQP2の機能調節を介するものと示唆される。またV2Rの機能異常から引き起こされる病態に対して、腎GABA系は望ましい効果を持つ可能性がある。GABAによる利尿作用の詳細が明らかとなれば、尿酸上昇などの副作用が少ない新しい降圧利尿薬の開発を促す可能性もある。またはGABA系を賦活するとの知見が得られているリジンの補充により水利尿やナトリウム利尿が惹起され、血圧安定化作用を示す可能性が考えられる。