著者
ジョジョメニョ マウリ 金子 明 菊池 三穂子 ウバレー ラッタワン 大澤 彦太 塚原 高広 谷畑 健夫 パールマン ヘドウイク 平山 謙二 小早川 隆敏
出版者
東京女子医科大学
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.82-89, 2005-04

血中IgE上昇に帰結するIL4プロモーターの遺伝的変異が,マラリアに対する感受性と相関することが最近の研究によって示唆されてきている.本研究においては集団遺伝学的方法を用いヴァヌアツにおけるマラリア流行度が異なる3島嶼において,IL4-590および+33塩基における変異対立遺伝子頻度,血中総IgEおよび熱帯熱マラリア原虫特異的IgE濃度を調べた.3島嶼は中等度の流行が続くMalakula,中等度の流行だが対策が功を奏しているAneityumおよびマラリア流行がないFutunaである.これらの島嶼住民より採取した血液サンプルよりIL4-590および+33についてそれぞれ計878および750サンプルの解析を行った.変異対立遺伝子頻度はこれら3島嶼間においてC-590Tが0.27〜0.39,C+33Tが0.39〜0.48の範囲で変動した.両対立遺伝子間には顕著な連鎖不均衡が認められた(p<0.001).これら両変異対立遺伝子ともAneityumにおいてはFutunaより高い頻度で認められた(p<0.05).AneityumにおいてはIL4+33位における変異対立遺伝子の存在する群での血中熱帯熱マラリア原虫特異的IgE濃度は有意に上昇していた(p<0.05).しかしながら,これらの関係はMalakulaにおいては認められなかった.本研究はメラネシア住民集団において当該変異遺伝子頻度に関する最初の報告である.見出された変異対立遺伝子頻度はこれまで報告されている,より高いアジア住民集団とより低いヨーロッパ住民集団の中間の値であった.さらにIL4多型が特異的IgEとマラリア病形の関係に関る遺伝的因子の一つであることが示唆された.