著者
斎藤 夏来 谷舗 昌吾
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
no.161, pp.1-12, 2016

栄西は一般に臨済宗の開祖とされるが、顕密仏教全体の再興を志した実像とは隔たりがある。そこで栄西認識を示す史料の網羅的な収集を試みた結果、中世顕密仏教につらなる「葉上僧正」という呼称に対抗すべく「千光国師」という呼称が近世に台頭した様相が明らかとなった。国内仏教の一宗派へと転身した近世禅宗の周辺で、栄西の国際的な呼称であった「千光」と、天皇帰依僧への尊称であった「国師」とを組み合わせる動きがあったと想定した。