著者
豊永 悟史 小原 大翼 宮崎 康平 古澤 尚英
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.28-41, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
37

地方環境研究所(以下,「地環研」)は,都道府県及び指定都市(以下,「都道府県等」)の出先機関として環境行政を推進するための調査や研究を担っており,その研究成果は都道府県等の行政施策へ活用されること(以下,「行政活用」)が求められる。そこで,研究成果の行政活用の実態とそれに影響する要因を把握することを目的としたアンケート調査を行った。全国的な政策課題であるPM2.5に関する研究を対象として,関連業務を担当する地環研と行政部署に対して,それぞれ個別にアンケートを送付し回答を得た。個別の研究単位では,「活用有」と回答された研究は25%(n=36),「活用無」と回答された研究が72%(n=104),「無回答」が3%(n=5)であり,「活用無」の研究が大半を占めた。都道府県等単位では,「活用有」の研究がある地環研では,「活用有」の研究がない地環研に比べて実施した研究の数が多いという関係が認められた(p<0.05)。この結果から,研究の数が多く「活用有」の研究がある地環研(n=12),研究の数が多く「活用有」の研究がない地環研(n=13),研究の数が少なく「活用有」の研究がない地環研(n=22)の3タイプに地環研を分類することができた。個別の研究の行政活用の有無及び地環研のタイプごとに,各回答項目を集計した結果に統計検定を適用し,研究成果の行政活用に影響を与える主な要素を評価した。その結果,研究単位では研究の「立案・計画」及び「取組体制」の二つの要素が,都道府県等単位では「専門性」と「行政部署との連携」の二つの要素が影響していると推測された。これらの要素は相互に関連しており,行政活用を推進していくためにはバランスを維持しながら各要素を強化していくことが重要であると考えられた。