著者
杉本 安寛 武藤 動 豊満 幸雄
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.175-181, 2000-07-31

牛尿施用によって生成されたN0_3-Nの土壌中における移動の様相, N0_3-N移動と降雨に伴う土壌の水分状態との関係および溶脱により損失する窒素量について検討した。バヒアグラス優占草地に,牛尿(60gN/m^2)をそれぞれ, 1991年8月8日および1991年10月15日に施用した(以下, 8月区, 10月区)。土壌は約1〜2週間ごとに150cmの深さまで, 15cm間隔で採取し, 採取土壌のNH_4-NおよびN0_3-Nを測定した。また, 地表から10cm間隔毎に, 150cm深さまでの土壌水の圧力ポテンシャルをテンシオメータで求め, 降水量を転倒升型雨量計により測定した。尿窒素の大部分が8月区では2週間, 10月区では5週間でNO_3-Nへと変化した。NO_3-Nの土壌下層への移動速度は, 降雨に伴う季節的な土壌水分状態の影響を受けた。土壌水の圧力ポテンシャル勾配から, 土壌水が下降移動する上部境界面を求めた。その結果, 上部境界面は実験期間の大部分において, 約60cmの深さにあった。上部境界面と150cm深さに含まれるN0_3-N量の最大値を地下浸透によって系外へ損夫する窒素量(溶脱量)とみなした。その結果, 8月区では21.5g(施用尿窒素の35.8%), 10月区では, 34.9g(施用尿窒素の58.2%)が, 溶脱量と推定された。