著者
杉本 安寛 LIN Dongzhi
出版者
宮崎大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、薬用植物から化学除草剤や殺菌剤の代替となる天然化合物を見出し、将来安全性の高い天然化合物による生物的除草剤・殺菌剤開発に関する基礎知見を得、省農薬農業技術確立に資することにある。これまでには以下の結果を得た。1.九州暖地に生育する多数の薬用植物を供試し、それらの植物体抽出液がレタスならびに水田雑草(ヒメタイムビエやコナギなど)の生育に及ぼす影響を検討したところ、強い抑制効果のあるリュウノヒゲ(Ophiopogon japonicusK)やドクダミ(Houttynia cordataT.)やビワ(Eriobotrya japonica)やカンナ(Canna generali)の4種薬用植物を見出した。2.リュウノヒゲに含まれる天然抑制物質の同定を行った結果、ρ-ヒドロキシ安息香酸、バニリン酸、シリンガ酸、シリングアルデヒド、シナピン酸およびサリチル酸の6種フェノール性物質が存在することが分かった。そのなかで、最も含量高い成分はサリチル酸であった。3.ドクダミに含まれる天然抑制化学物質の同定を試み、メチ-n-ノニルケトン、ラウリンアルデヒド、カプリンアルデヒドならびにクエルシトリンのような化合物の存在することが推測できた。そのなかで、最も抑制効果のある成分はメチ-n-ノニルケトンならびにカプリンアルデヒドであることが判明した。4.リュウノヒゲ(Ophiopogon japonicusK)やドクダミ(Houttynia cordataT.)やビワ(Eriobotrya japonica)やカンナ(Canna generali)の乾燥粉末を用いて実際の農業現場において、水田雑草がかなり抑制され、水稲の生育と収量に対する抑制作用はあまり見られなかった。
著者
中西 良孝 原口 裕幸 岩崎 絵理佳 萬田 正治 枚田 邦宏 飛岡 久弥 杉本 安寛 若本 裕貴 堀 博
出版者
日本暖地畜産学会
雑誌
西日本畜産学会報 (ISSN:09143459)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.43-49, 2001

宮崎県諸塚村のクヌギ (<I>Quercus acutissima Carruth</I>) 林内放牧地 (標高約1, 000m) において, 1997年と1998年の放牧期間中 (5~11月) のマダニ類あるいは外部から飛来する昆虫を採集し, それらの種類構成と季節的消長を調べるとともに, 黒毛和種繁殖牛の血液所見から牛の健康状態との関連を明らかにした.1997年に草地 (フランネル法) で得られたダニはすべてフタトゲチマダニ (<I>Haemaphysalis longicornis</I>) 幼虫であり, 10月に放牧地外で多かった.牛体においてはフタトゲチマダニとヤマトマダニ (<I>lxodes ovatus</I>) の成虫がわずかに見られた.1998年の林床植生内ダニはフタトゲチマダニ幼虫がほとんどであり, 7~10月にクヌギ林地で多く見られた.牛体には主としてヤマトマダニ成虫が寄生しており, 5月で有意に多かった (P<0.05) .また, マダニ類は1997年よりも1998年で多くなる傾向を示した.ハエ類はノサシバエ (<I>Haematobia irritans</I>) とサシバエ (<I>Stomaoxys calcitrans</I>) が得られ, 前者が優占種であり, 8月に発生のピークを示した.アブ類はアカウシアブ (<I>Tabanus chrysurus</I>) とアオコアブ (<I>T. humilis</I>) が優占種であり, 放牧期間を通して比較的少なかったものの, 7月にピークを示し, 気温 (20℃以上) との関連が示唆された.ブユ類はすべてウマブユ (<I>Simulium takahasii</I>) であり, 5月で有意に多かった (P<0.05) .ハエ・アブ・ブユ類はいずれも刺咬性であり, ハエ・ブユ類の発生はアブ類と比べて長期にわたっていた.林内放牧牛の血中総蛋白質濃度, 白血球数, 赤血球数およびヘマトクリット値はいずれもほぼ正常範囲内であり, 小型ピロプラズマ原虫の寄生も認められなかった.<BR>以上から, 放牧年数の経過に伴ってマダニ類は増加し, 外部から飛来する刺咬性昆虫も認められたものの, 血液所見および外見上は異常が見られず, 本研究の林内放牧地は家畜生産環境として問題のないことが示された.
著者
浅野 陽樹 友松 重樹 田島 大輔 杉本 安寛 高橋 ひろみ 日高 厚
出版者
環境技術学会
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.675-683, 2013-11-20 (Released:2013-11-29)
参考文献数
14
被引用文献数
1

豚糞尿を原料とした小規模なメタン発酵プラントを暖地にて運転し,発酵状況と有機物の動態を調査した.バイオガス生成量(0.64m3/投入VS-kg)およびメタン濃度(72.1%)は高かったものの,豚糞尿原料に含まれる有機物のうちバイオガスへ移行する割合は数十% に留まった.有機物の損失は,固液分離行程,発酵槽系外での発酵,消化液としての排出等で起こり,システム設計時の留意事項と考えられた.
著者
守屋 和幸 吉村 哲彦 北川 政幸 小山田 正幸 杉本 安寛
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.229-234, 2003-05-25
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

林内放牧牛にGPS受信機を装着し,同時に実施した行動調査の結果とGPS測位記録とを用いて調査牛の行動履歴の解析を行った.2001年8月27日から9月1日(8月30日のみ雨天)に,スギ人工林(約1.4ha)に放牧されている黒毛和種繁殖雌牛4頭のうち2頭にGPS受信機を装着し,10秒間隔でGPS測位記録を収集した.あわせて,1分間隔で調査牛の行動を移動・佇立・採食・横臥・反芻に分類して記録した.このうち採食行動については採食した植物種も記録した.調査牛は周囲が開けている高台の休息場所と低地の水飲み場との間を往復しながらその途中で採食する行動をとった.調査牛の行動は,移動(10%),採食(40%),その他(50%)であった.調査牛はススキに対する採食頻度がもっとも高く,次いでワラビ,クズの順であった.
著者
杉本 安寛 武藤 動 豊満 幸雄
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.175-181, 2000-07-31

牛尿施用によって生成されたN0_3-Nの土壌中における移動の様相, N0_3-N移動と降雨に伴う土壌の水分状態との関係および溶脱により損失する窒素量について検討した。バヒアグラス優占草地に,牛尿(60gN/m^2)をそれぞれ, 1991年8月8日および1991年10月15日に施用した(以下, 8月区, 10月区)。土壌は約1〜2週間ごとに150cmの深さまで, 15cm間隔で採取し, 採取土壌のNH_4-NおよびN0_3-Nを測定した。また, 地表から10cm間隔毎に, 150cm深さまでの土壌水の圧力ポテンシャルをテンシオメータで求め, 降水量を転倒升型雨量計により測定した。尿窒素の大部分が8月区では2週間, 10月区では5週間でNO_3-Nへと変化した。NO_3-Nの土壌下層への移動速度は, 降雨に伴う季節的な土壌水分状態の影響を受けた。土壌水の圧力ポテンシャル勾配から, 土壌水が下降移動する上部境界面を求めた。その結果, 上部境界面は実験期間の大部分において, 約60cmの深さにあった。上部境界面と150cm深さに含まれるN0_3-N量の最大値を地下浸透によって系外へ損夫する窒素量(溶脱量)とみなした。その結果, 8月区では21.5g(施用尿窒素の35.8%), 10月区では, 34.9g(施用尿窒素の58.2%)が, 溶脱量と推定された。
著者
佐伯 雄一 中村 扶沙恵 三重野 愛 下入佐 克志 赤尾 勝一郎 杉本 安寛 長友 由隆
出版者
宮崎大学
雑誌
宮崎大学農学部研究報告 (ISSN:05446066)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.41-48, 2004-03-30
被引用文献数
1

本研究は芋製焼酎粕の農地還元による窒素負荷の実体の調査と発生する糸状菌の同定を目的として,宮崎大学農学部圃場で調査を行った.試験に用いた焼酎粕の現物当たりの組成はpH3.9,水分94.4%,全炭素2.44%,全窒素0.17%,C/N比,14.33で,液体部分の成分は全炭素0.90%,全窒素0.07%,C/N比12.54であった.施用量は約23kg/m^2(23t/10a),窒素換算39g/m^2(39kg/10a)で試験を行った.この施用量は窒素換算で,宮崎県で行われてきた焼酎粕の農地還元量の約2倍の窒素量に相当した.焼酎粕施用後に発生する糸状菌は麹菌(Aspergillus kawachi)とは明らかに異なっていた.栽培試験に用いたトウモロコシの窒素含有率は施用区で1.5%,無施用区で0.8%,窒素利用率は21.2%であった.土壌pHは試験期間中,施用区,無施用区,に同様な推移を示した.硝酸態窒素とECは同様な推移を示し,施用後14日後にそれぞれ表土で極大値を示し,硝酸態窒素が8.33mg/100g乾土,ECが0.33dS/mであった.その後,徐々に減少していく傾向が認められたが,試験期間の終わりにおいても施用区で無施用区よりも高い値を示し,焼酎粕施用による肥効が長期間にわたることが示唆された.硝酸態窒素の下層への浸透は梅雨の期間にごく低濃度で認められたが,pH,ECの下層土での差異は認められなかった.したがって;焼酎粕の農地還元は,規制量で施用する限り,環境への負荷の小さい土壌改良資材と肥効成分の高い有機質が混合された資材として有効に活用することが可能であり,物質循環の観点からも望ましいものと考えられる.
著者
杉本 安寛 平田 昌彦 上野 昌彦
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.8-14, 0000
被引用文献数
5

バヒアグラス(Paspalum notatum)放牧草地におけるホルスタイン育成牛群の排泄行動を物質循環との関係から調査した。調査地は,宮崎県畜産試験場(西諸県郡高原町)内の草地約17.6aで,これに隣接して庇陰樹を囲んだ約60m^2の休息場を設けた。5月下旬より10月下旬まで8回,各回21-24頭の牛群を48時間あるいは72時間昼夜連続放牧し,5回次(7月26-29日),7回次(9月23-25日)および8回次(10月26-28日)について排糞,排尿,および採食行動を観察した。結果は以下の通りであった。1)5回次の気温は7時より18時まで27℃を越え,7回次も10-15時は27℃を越えたが,8回次は最高気温が約23℃であった。2)排糞回数(回/頭/日)は6.5-8.3回の範囲にあり,そのうち草地で排糞された比率は5,7および8回次が,それぞれ,73.9%,70.7%および88.6%であった。排尿回数(回/頭/日)は10.7-18.3回で,5回次が最も高く,次いで7回次が高かった。草地で排尿された比率は5回次と7回次が50%前後と低く,他方,8回次は87.9%と,高かった。3)糞は68-76%が日中に排泄され,尿は約80%が日中に排泄された。4)日中の温度が高い時期には,糞尿の草地への排泄比率が低下し,養分の再循環が妨げられることが示唆された。