著者
財津 大夏 三宅 悠介 松本 亮介
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2018-IOT-41, no.4, pp.1-8, 2018-05-10

日本ホビー協会によると,ハンドメイド作品を対象とした EC サイトの流通は年間 177 億円が見込まれている.ハンドメイド作品はその希少性や独創性が価値の一端を担っているが,市場の拡大に伴い,これらの性質を満たさない大量生産品の出品が問題となっている.大量生産品の増加は,ハンドメイド作品を期待する購入者の EC サイトへの不信感や流通低下に繋がり,長期的には市場の衰退を招きかねない.このためハンドメイド作品を対象とした EC サイトでは,大量生産品の削除や出品者のアカウント停止などの対応が行われるが,全商品の目視確認は困難であるため,大量生産品を自動的かつ継続的に検出する仕組みが必要である.本報告ではこの課題を解決するため,商品の削除やアカウント停止を回避する振る舞いを出品者の異常な振る舞いとして検出する手法を提案する.大量生産品の出品者は,アカウント停止を回避するために多数のアカウントを作成し,アカウント名に無意味な文字列を設定する傾向がある.また,商品の削除に備えて出品数を増やすために国外 EC サイトの商品を翻訳しており,商品説明文などの日本語が不自然であるという特徴がある.これらの特徴を異常と定義し,単純ベイズ分類器で分類することで大量生産品を検出する.本報告では実際のハンドメイド作品を対象とした EC サイトのプロダクション環境のデータに対して提案手法を適用し,検出率を計測して有効性を検証した.