著者
松本 亮介 平原 正裕 三宅 悠介 力武 健次 栗林 健太郎
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2017-IOT-39, no.13, pp.1-8, 2017-09-22

インターネットの利用に際して,ユーザーや企業においてセキュリティ意識が高まっている.また,HTTP のパフォーマンス上の問題を解消するために,HTTP / 2 が RFC として採択された.それらを背景に,常時 HTTPS 化が進む中で,高集積マルチテナント方式の Web サーバで管理している大量のホストも HTTPS 化を進めていく必要がある.同方式は単一のサーバプロセスで複数のホストを管理する必要があるが,Web サーバの標準的な設定を用いて事前にホスト数に依存した数の証明書を読み込んでおく方法では,常に確保しておく必要のあるメモリ使用量が増大することで,リソース効率が低くなり,収容数が低下する.そこで,Server Name Indication (SNI) を利用可能である条件下において,事前にサーバプロセスに証明書を読み込んでおくことなく,SSL / TLS ハンドシェイク時にホスト名から動的にホストに紐づく証明書を読み込み,メモリ使用量を低減させる手法を提案する.実装には,我々が開発した,mruby を用いて高速かつ少ないメモリ使用量で Web サーバの機能を拡張するモジュール ngx_mruby を採用して,動的にサーバ証明書を選択する機能を実装した.また,筆者が所属する GMO ペパボ株式会社のホスティングサービスにおいて本手法を導入し,証明書の数やサーバリソースの使用量の関係性,性能に関する評価を行った.
著者
財津 大夏 三宅 悠介 松本 亮介
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2018-IOT-41, no.4, pp.1-8, 2018-05-10

日本ホビー協会によると,ハンドメイド作品を対象とした EC サイトの流通は年間 177 億円が見込まれている.ハンドメイド作品はその希少性や独創性が価値の一端を担っているが,市場の拡大に伴い,これらの性質を満たさない大量生産品の出品が問題となっている.大量生産品の増加は,ハンドメイド作品を期待する購入者の EC サイトへの不信感や流通低下に繋がり,長期的には市場の衰退を招きかねない.このためハンドメイド作品を対象とした EC サイトでは,大量生産品の削除や出品者のアカウント停止などの対応が行われるが,全商品の目視確認は困難であるため,大量生産品を自動的かつ継続的に検出する仕組みが必要である.本報告ではこの課題を解決するため,商品の削除やアカウント停止を回避する振る舞いを出品者の異常な振る舞いとして検出する手法を提案する.大量生産品の出品者は,アカウント停止を回避するために多数のアカウントを作成し,アカウント名に無意味な文字列を設定する傾向がある.また,商品の削除に備えて出品数を増やすために国外 EC サイトの商品を翻訳しており,商品説明文などの日本語が不自然であるという特徴がある.これらの特徴を異常と定義し,単純ベイズ分類器で分類することで大量生産品を検出する.本報告では実際のハンドメイド作品を対象とした EC サイトのプロダクション環境のデータに対して提案手法を適用し,検出率を計測して有効性を検証した.
著者
三宅 悠介 松本 亮介
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2018-IOT-42, no.2, pp.1-7, 2018-06-21

EC サイトの商品種類増大に伴う情報過多問題を解決するため,利用者の要求を満たす商品を自動的に提案する機能が EC サイトにとっての関心事となる.大規模 EC サイトで商品を提案するために扱う特徴量は大規模かつ高次元ベクトルの集合となるため,類似度の比較は精度と計算量を抑えた近似解を用いなければならない.商品を自動的に提案する機能には,可用性を担保しつつ,提案内容の的確さと充分な応答速度が求められる.本報告では,大規模 EC サイトで商品を提案することを想定して,精度と速度を両立した分散可能な近似近傍探索エンジン Sanny を提案する.Sanny は,検索質問データ (クエリ) に対する高次元ベクトル集合の近傍探索結果の上位集合が,クエリと高次元ベクトル集合を任意の次元数で等分した部分ベクトル単位で近傍探索した結果と類似しやすいことに着目して,提案すべき商品の近傍探索を部分ベクトル単位での探索に分解することで分散処理可能にし,その探索結果の和集合である近傍候補から再度近傍探索を行うことにより,全体として高速に近似近傍探索を行える.実験では,従来の近似近傍探索に対する速度並びに精度面での性能比較について評価を行う.
著者
松本 亮介 近藤 宇智朗 三宅 悠介 力武 健次 栗林 健太郎
雑誌
インターネットと運用技術シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.89-97, 2017-11-30

クラウドサービスや Web ホスティングサービスの低価格化と性能の向上に伴い,コンテナ型の仮想化技術を活用することにより,複数のユーザ環境の収容効率を高めると同時に,セキュリティの担保とリソース管理を適切に行うことが求められている.一方で,障害時の可用性やアクセス集中時の負荷分散については依然として各システムに依存している.本研究では,HTTP リクエスト毎に,コンテナの起動,起動時間,起動数およびリソース割り当てをリアクティブに決定する,実行環境の変化に素早く適応できる恒常性を持つシステムアーキテクチャを提案する.提案手法により,アクセス集中時にはコンテナが HTTP リクエストを契機に,アクセス状況に応じて複製 ・ 破棄されることで,迅速に自動的な負荷分散が可能となる.さらに,コンテナが一定期間で破棄されることにより,収容効率を高め,ライブラリが更新された場合には常に新しい状態へと更新される頻度が高くなる.
著者
三宅 悠介 松本 亮介 力武 健次 栗林 健太郎
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2017-IOT-37, no.4, pp.1-8, 2017-05-18

BtoC の EC サイトで取り扱う商品の種類の増加に伴い,EC サイト利用者の通常の行動では全ての商品を見て回ることは困難であるため,多くの EC サイトでは効率的に商品を閲覧できるよう関連性のある商品を動線上に表示している.購買履歴等の情報が蓄積されないと関連商品を選定できない問題を解決するため,商品の持つ様々なメタデータを利用する手法や,視覚的な訴求力の強い商品画像を元にした,畳み込みニューラルネットワークを始めとした深層学習による精度の高い関連商品の選定手法が提案されている.しかし,適切な粒度のメタデータの整備に手間を要する問題や,深層学習のための大量の訓練データセットと計算時間が必要となる問題から,これらが導入への大きな障壁となっている.本報告では,画像分類用の学術ベンチマークであり,EC サイト商品画像特性と類似する ImageNet において高い成績を出した Inception-v3 モデルを学習済みネットワークとして採用し,一般物体の特徴を強く表現する識別層に近い手前のプーリング層までから得られる特徴量をもとに近似最近傍探索により類似度を比較することで,特徴抽出器の学習と購買履歴を必要としない類似画像による関連商品検索システムを提案する.EC サイトにこの類似画像による関連商品検索システムを導入し,画像のクリック率を商品カテゴリごとに計測することで類似画像による関連商品の有効性を検証した.
著者
田崎 冬記 宮木 雅美 戸田 秀之 三宅 悠介
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.503-511, 2013 (Released:2015-02-13)
参考文献数
26
被引用文献数
1

知床岬台地草原では,エゾシカ個体数の増加によってササ類の減少,樹皮剥ぎによる特定樹種の激減,実生・稚樹の採食による更新阻害,海岸性の植生群落とそれに含まれる希少植物の減少および土壌侵食等が問題となっている。このような背景からエゾシカの密度操作実験が行われ,同効果の把握や人為介入の開始・終了等の目安となる植生指標の開発が求められている。本調査では,防鹿柵内外のイネ科草本,アメリカオニアザミおよびハンゴンソウ,台地草原全体のイネ科草本およびクマイザサ,台地草原に隣接する森林の木本葉量の調査を行い,植生指標の適用性について検討した。その結果,イネ科草本はエゾシカ密度操作開始後から増加傾向を示し,逆にアメリカオニアザミはエゾシカの影響を排除した場合,直ちに減少した。これらは短期的な植生指標となり得ると考えられた。また,クマイザサは被度・稈高で密度操作実験開始後の変化が異なることから,被度は短期的,稈高は中長期的な植生指標となり得ると考えた。一方,台地草原に隣接する森林葉量は密度操作開始後,その増加量は高さによって異なったため,高さによって異なる時期の植生指標になり得ると考えた。
著者
松本 亮介 三宅 悠介 力武 健次 栗林 健太郎
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2017-IOT-37, no.1, pp.1-8, 2017-05-18

インターネットの利用に際して,ユーザーや企業においてセキュリティ意識が高まっている.また,HTTP のパフォーマンス上の問題を解消するために,HTTP/2 が RFC として採択された.それらを背景に,常時 HTTPS 化が進む中で,高集積マルチテナント方式の Web サーバで管理している大量のホストも HTTPS 化を進めていく必要がある.同方式は単一のサーバプロセスで複数のホストを管理する必要があるが,Web サーバの標準的な設定を用いて事前にホスト数に依存した数の証明書を読み込んでおく方法では,必要なメモリ使用量が増大することで,サーバプロセスの起動時や,CGI のようなプロセスの複製時に OS のページテーブルのエントリ数に依存するシステムコールの性能が著しく低下する.そこで,Server Name Indication (SNI) を利用可能である条件下において,事前にサーバプロセスに証明書を読み込んでおくことなく,SSL / TLS ハンドシェイク時にホスト名から動的にホストに紐づく証明書を読み込み,メモリ使用量を低減させる手法を提案する.実装には,我々が開発した,mruby を用いて高速かつ少ないメモリ使用量で Web サーバの機能を拡張するモジュール ngx mruby を採用して,動的にサーバ証明書を選択する機能を実装した.また,サーバ証明書データは,Redis によるキャッシュサーバによって管理し,本手法の有効性を評価した.
著者
栗林 健太郎 三宅 悠介 力武 健次 篠田 陽一
雑誌
インターネットと運用技術シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.48-55, 2021-11-18

物理空間上のセンサーやアクチュエーター等のデバイスとサイバー空間上の計算処理とを架橋する IoT システムにおいては,物理空間とサイバー空間との間における双方向のデータフローの構成が重要な課題となる.デバイス層,エッジ層,クラウド層の 3 層からなる IoT システムのアーキテクチャーモデルにおいては,設計・実装における構造的な複雑さが課題となる.その要因として(1)プログラミング言語や通信プロトコルの選択肢が多様であること,(2)データの取得方式が多様かつデータフローが双方向性を持つ,(3)IoT システムの全体を通じたデータフローの見通しが悪くなることの 3 つがある.本研究は,課題のそれぞれに対して(1)3 層を同一のプログラミング言語と通信プロトコルを用いて統合的に設計・実装できる手法,(2)push,pull,demand 方式のいずれにも対応し使い分けられる基盤,(3)3 層からなるデータフローを一望のもとに把握できる記法を提案する.提案のそれぞれに対して(1)提案手法を用いて 3 層からなる IoT システムを実際に統合的に設計・実装できること,(2)提案手法を用いるとデータの取得方式のいずれにも容易に対応できること,(3)提案する記法がデータフロー全体を十分に表現できることを評価することで,提案手法の有効性を示す.
著者
三宅 悠介 峯 恒憲
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J105-D, no.11, pp.641-652, 2022-11-01

ECサイトで扱う商品種類増大に伴う情報過多問題を解決するため,効果的な推薦手法を選択することが重要である.推薦手法の有効性は様々な要因や時間の経過によって左右されるため,最適な推薦手法の選択には実環境での継続的な評価が不可欠である.しかしながら,実環境での評価では機会損失が課題となる.本研究では,この実環境での評価を,文脈と時間の経過を考慮した多腕バンディット問題とみなして解くことで,機会損失を抑えながら最適な推薦手法を自動かつ継続的に選択するメタ推薦システムを提案する.評価では,実際のECサイトから取得したデータを用いて最適な推薦手法を選択するシミュレーションを実施した.実験の結果,提案システムが,評価時に生じる機会損失を抑え,文脈と時間の経過を考慮しない場合と比較して累積クリック数を約9.7%増加させる効果があることを確認した.
著者
三宅 悠介 峯 恒憲
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J103-D, no.11, pp.764-775, 2020-11-01

ECサイトには商品種類増大に伴う情報過多問題を解決するため,商品の自動提案機能が導入されている.この機能に用いられる推薦手法は数多く提案されていることから,ECサイトの運営者にとっては効果的な推薦手法を選択することが重要となる.推薦手法の有効性は様々な文脈に左右されるため,実環境での継続的な評価なしに最適な推薦手法を選択することは困難である.本研究では,推薦手法の選択を自動的かつ継続的に最適化する推薦システムを提案する.提案システムでは,最善な推薦手法の選択を多腕バンディット問題とみなして解く.また,時間の経過並びに商品特性の差異を文脈として考慮することで推薦手法の選択を最適化する.提案システムの有効性を評価するために,ECサイトから収集した実際のデータを使用して実験を行った.評価実験の結果,ECサイトにおいて時間の経過並びに商品特性の差異により有効な推薦手法が異なること,そのため時間による推薦手法の有効性の変化並びに閲覧中の商品カテゴリーを文脈とみなした最適化手法が,文脈を考慮しない場合と比較して累積クリック数を約2%増加させる効果があることを確認した.
著者
栗林 健太郎 三宅 悠介 力武 健次 篠田 陽一
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.635-649, 2023-03-15

物理空間上のセンサやアクチュエータ等のデバイスとサイバー空間上の計算処理とを架橋するIoTシステムにおいては,双方向のデータフローの構成が重要な課題となる.本研究は,階層的なアーキテクチャからなるIoTシステム全体を,単一のプログラミング言語で統合的に構築することを可能とするデータフロー基盤を提案する.その実現のために解決すべき課題として,(1)IoTシステム全体を構築可能なプログラミング言語としてどの言語を選択するか,(2)選択したプログラミング言語によって多様かつ双方向性を持つデータ取得方式に対応できるか,(3)IoTシステムの階層的なアーキテクチャにおけるデータフローを見通し良く扱えるか,の3点を示した.各課題に対して,(1)各層の実装に用いるプログラミング言語としてElixirを選択する,(2)Elixirを用いて多様かつ双方向性を持つデータ取得方式に対応できる基盤としてPratipadを提案する,(3)Pratipadにおいて階層的なアーキテクチャにおけるデータフローを一望のもとに把握できる記法を提供する,という3点の提案手法により解決を図った.提案手法について,有効性および適用可能性について評価した.その結果,提案手法が本研究の目的を実現するとともに,実用的な機能および規模を持つIoTシステムの構築に適用可能であることを示した.
著者
渡辺 龍二 酒井 敏彦 三宅 悠介
雑誌
第84回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, no.1, pp.17-18, 2022-02-17

本研究ではECサイト運営者の意思決定に対するデータ駆動型支援システムを構築する.本システムの狙いは,運営者がシステムとの対話によるデータ探索を通して仮説立案・検証を行い,意思決定に有用な知識を獲得することである.しかしその実現のためにはデータのスパース性や分析対象と分析結果の膨大さといった課題を解決する必要がある.本研究では各課題に対して,非線形テンソル因子分解による商品評価データのモデル化と,モデルの分析結果を効率的に探索するための視覚的インタフェースの開発というアプローチを取る.本報告では構築したシステムから得られた分析結果や今後の課題について述べる.
著者
三宅 悠介 栗林 健太郎
雑誌
インターネットと運用技術シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.1-8, 2020-11-26

多腕バンディット問題は,腕と呼ばれる複数の候補から得られる報酬を最大化する問題である.同問題の Web サービスにおける広告配信や推薦システムへの応用では,腕となる利用者の嗜好傾向が多様である課題に対処するため,利用者の文脈を考慮した線形な問題設定への拡張と解法が提案されている.一方で,時間の経過に従い報酬分布が変化する非定常な課題に対処するため,変化検出の手法を組み合わせ報酬の変化を観察することで変化に追従する解法が提案されている.しかしながら,線形な問題設定にこの解法を適用する場合,文脈の増加に伴い各文脈での報酬の観測回数が低下するため,文脈ごとに報酬の変化を観測する方式では,変化の検出と追従が遅れてしまう.加えて,変化の検出と追従に必要な文脈ごとの報酬の履歴データのサイズも文脈の増加に伴い肥大化する.本研究では,多様な文脈であっても腕の報酬分布の変化に迅速に追従可能な,線形かつ非定常な多腕バンディット問題の解法を提案する.提案手法では,文脈ごとの報酬からではなく,文脈の数によらない固定数の値の推移のみから報酬分布の変化を検出することで,腕の報酬分布の変化に迅速に追従する.さらに,過去期間の値を要約するデータ構造を導入することで,報酬分布の変化検出と追従に必要な履歴データのサイズの肥大化を抑制する.評価では,線形かつ非定常な多腕バンディット問題を設定し,提案手法を用いない場合と比較して変化への追従性が高いこと,履歴データのサイズの肥大化が抑えられることを確認した.