著者
永友 勇 赤井 重恭
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.48-55, 1953-10-30

1.本論文にはエビウラタケ(Gloeoporus dichrous (FR.) BRES.)に就いて行った實驗結果を記載した。2.本菌はアジア、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカ、オーストラリア、アフリカ等に亘って廣く分布し、我が國に於ては北海道、宮城、福井、京都、大阪、愛媛及び九州等に産する。3.本菌は我が國に於ては、廣葉樹の枯枝幹に生ずることのみが知られているが、海外に於ては針葉樹10種以上、廣葉樹21種以上の寄生植物が知られている。筆者等は本菌をソメイヨシノ(Pruns yedoensis)、シダレヤナギ(Salix babylinica)、クヌギ(Quercus acutissima)及びサクラの1種(Prunus sp.)の枝幹上で採集したが、前の3種は本菌の新寄生植物と認むべきものである。4.本菌菌糸の發育と培養温度との關係に就いて、乾杏煎汁寒天、〓芽煎汁寒天、馬鈴薯煎汁寒天の3培養基を用いて實驗した結果では、其の發育最低温度限界は6°-11℃.に、發育最高温度限界は40°-43℃.にあって、發育最適温度は28°-30℃.にあるものと思われる。5.本菌のBAVENDAMM氏酸化酵素反應、並に寄主材料の腐朽型等から見て、本菌はリグニン溶解菌に屬するものと認めた。6.本菌に封する各種樹木材片の比較抵抗力を針葉樹4種、廣葉樹7種に就いて實驗した結果によると、針葉樹は一般に抵抗力が強く、就中スギ(心材)は最も強大で僅かに1.0%の重量減少率を示したに過ぎなかった。これに反し、廣葉樹は一般に抵抗力が弱く、就中センノキは全供試材片中最も激しく腐朽し、24.5%の重量減少率を示した。針葉樹中、アカマツ(心材)は稍、抵抗力が弱く、6.9%の重量減少率を表した。