著者
赤沢 克洋 古安 理英子
出版者
地域地理科学会
雑誌
地域地理研究 (ISSN:21878277)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.1-14, 2020

コンテンツツーリズムの取り組みを充実させるためには、旅行者選好に基づくマーケティング管理が必要である。その端緒は旅行者がコンテンツツーリズムに対して何を求めているのかを把握することである。しかし、コンテンツツーリズムにおける旅行者ニーズの把握は十分ではない。そこで本研究では、旅行者の視点からコンテンツツーリズムの取り組みの重要度を定量的に明らかにすることを目的とした。このために、ベスト・ワースト・スケーリングに基づいたアンケート調査を実施し、コナンのまちづくりを分析対象とした2つの分析課題に取り組んだ。第1に、ランダムパラメータロジットモデルを適用した結果から、①作品の世界を味わえるような取り組みが旅行者にとって最も重要であること、②コナン通りに見どころをつくる取り組み、撮影スポットを充実させる取り組み、家族で遊べる施設や場所を充実させる取り組み、コナンに関するグッズを充実させる取り組みが重要であること、③入館料を下げる取り組みが相対的に重要でないことがわかった。第2に、交差項を含めた推定を行った結果から、①若年層、長時間滞在、女子旅、子供連れ以外、休憩目的以外、コナンファン、コナンマニア、漫画アニメ愛好、聖地巡礼および買い物愛好の属性や選好をもつ旅行者ほど作品の世界を味わえるような取り組みの重要度が相対的に高いこと、②男性、県内居住、長時間滞在、女子旅、子供連れ以外、コナンファン、コナンマニア、漫画アニメ愛好、聖地巡礼および買い物愛好の属性や選好をもつ旅行者ほどコナンのまちづくりにおける様々な取り組みの重要度が相対的に高いこと、③旅行者のいくつかの属性や選好と取り組みの重要度には理論整合的な関係が確認できることが示された。
著者
赤沢 克洋 上杉 恵一郎 田村 坦之
出版者
環境科学会
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.9-21, 2002 (Released:2011-03-05)

世界各国はCO2排出抑制に向けた政策対応を迫られており、炭素税や排出権取引など多くの政策手段が検討されている。そこで本研究では、日本における炭素税の導入可能性と国際間排出権取引参加の是非を検討することを目的とした。評価基準としては、国際競争力と産業間格差に焦点をあてた。 最初に、政策評価のための非線形数理モデルを構築した。本モデルは、応用一般均衡モデルをベースとして、CO2排出削減政策に対する産業主体の行動を組み込んだものであり、各国ごとの利潤最大化行動を定式化した上部構造と3つの下部構造から構成される。下部構造では国内最終需要、輸出量、CO2費用の決定を定式化しており、上部構造と相互依存関係を持たせている。このような定式化により、本モデルは、国際間の競争をも考慮した各国各産業への影響を評価することができる。 炭素税と国際間排出権取引に関するシナリオを設定し、モデルによるシミュレーションを行った。炭素税に関するシナリオ分析から、炭素税導入により国内価格の上昇が1%弱、利潤の低下が2%弱となり、また国際競争力への影響が小さいと推定された。しかし、国際競争力に関して産業間格差が生じていた。国際間排出権取引に関するシナリオ分析から、国際間排出権取引に参加することは、利潤や国際競争力の点から有利であり、炭素税導入と比較して大きな産業間格差を生じないことがわかった。以上から、産業間格差への対策を必要とするものの炭素税が導入可能であり、加えて国際間排出権取引に参加することが有効な政策手段であると結論づけた。