著者
越智 勇成
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第37回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.57-58, 2021 (Released:2021-09-22)

年々増加しているメダカの種類の中で,最近注目されている体色が緑色のメダカ。しかしメダカに元来存在している色素胞は,黒,黄,虹,白色の4つであり,緑色の色素胞は存在していない。それなのになぜ緑色の体色が発現しているのかが不思議に思った。 また,緑色が発現するメカニズムを解明することができれば,今後の品種改良等に貢献できると考え,研究を行った。メダカに緑色の体色が発現するメカニズムを調べ,それが遺伝的要因であるのかを調べるため,緑色のメダカを作出することから始めた。青色のメダカと黄色のメダカをかけ合わせると緑色のメダカが生まれるのではないかと仮説を立て,ドラゴンブルーメダカ(青色体外光ヒカリメダカ・補足:ヒレ光)レモンスカッシュメダカ(黄半透明鱗ヒカリメダカ)を交配し,生まれたF1の体色を評価すると,茶系と青系の体色が生まれ,比は約3:1となっていた。 また,茶系の体色をした個体の一部に背中に黄緑色の光沢が発現しているメダカを確認できた。次に,黄緑色の光沢をもつ個体をかけ合わせると,それらが体全体に広がるのではないかと仮説を立て,生まれたF1の黄緑色の光沢をもつ個体を選別し,交配した。 その結果,F2の体色は10種類に分かれ,その中には,グラスグリーンという色に近い体色をもった個体も含まれていた。しかしながら,黄緑色の光沢が見られる個体は確認できなかった。これらの結果から,メダカの緑色の体色は,突然変異ではなく,青系統のメダカと,黄色系統のメダカを交配させることで生まれることが分かった。また,黄緑色の光沢は,累代しても伸びていかないが,緑色の体色は累代すると濃くなっていく可能性が高いと考えられる。