著者
越智 正樹
出版者
西日本社会学会
雑誌
西日本社会学会年報 (ISSN:1348155X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.33-46, 2019 (Released:2020-03-27)
参考文献数
14

今日、全国の様々な観光現象において、非観光業者である住民が参画して個性的な魅力を発揮することが奨励されている。一方で、素人による個性の発揮はトラブルの発生にも繋がりやすく、平準化に向けた規制等が発動される例もある。このような平準化の流れの中で、非観光業者ならではの個性発揮はどのように維持あるいは変質されるものなのだろうか。本論はこの問いについて、沖縄県の教育旅行民泊を対象とし、民泊受入団体と旅行社とがその個性的価値をどのように認識しているか、またその価値がいかに(非)伝達・共有されているか、さらに受入団体側の自己規範化がいかに行われているか、の分析を通じて考察した。結果として、個性的価値が不明瞭なまま措かれている事柄は、価値仲介者(旅行社)との意思疎通の不足が拍車をかけて、その価値を担う主体(受入団体)自らによって平準化が優先され、その価値は矮小化の恐れに晒されていると言わざるを得なかった。これを避けるためには、受入団体側と旅行社側との協働による価値の言語化が必要であり、これを実現するためには第3者がリーダーシップを発揮するしかないことが指摘される。