著者
越谷 美貴恵
出版者
日本介護福祉学会
雑誌
介護福祉学 (ISSN:13408178)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.226-239, 2006-10-01

本研究は,特別養護老人ホーム介護職員が体験している利用者からの暴力的行為の実態について明らかにし,今後の支援システムの課題について検討することを目的とした.3府県4施設の介護職員を対象にアンケート調査を実施し,163人から回答を得,記入もれのない回答票151票(有効回答率92.6%)を分析対象とした.過去1年間に暴力的行為を受けたことがある介護職員は84.1%,そのうち95.3%が「たたく,つねる,足で蹴飛ばす」などの身体的暴力を経験し,暴力的行為による影響として,仕事に対する意欲低下や精神的ストレスの増幅のため離職意向をもつ者が多く,52.8%の被害者が「仕事だから仕方ないと我慢する」現状にあった.施設,年齢,勤務年数,職種,性別による有意差はみられなかった.しかし,入所者が暴力的行為にいたる原因は個々の介護職員の介護方法にあると考える傾向が強く,具体的支援システムについて何の希望も示さない職員が多かった.