著者
趙 銀仁
出版者
明治大学大学院
雑誌
法学研究論集 (ISSN:13409131)
巻号頁・発行日
no.40, pp.231-248, 2013

中国の道路交通安全法76条では,立証責任の転換を通じて,交通事故の加害者に無過失責任に近い責任を負わせることを定めている。また,被害者救済のため,強制責任保険制度を設けている。しかし,中国における交通事故賠償法の立法,司法及び学説の現状を検討することにより分かるように,交通事故の損害賠償について,まず,加害者に責任があるか否かにかかわらず,先に保険会社が強制責任保険の限度内において賠償責任を負い,次に,強制責任保険の限度を超えて,不足の部分について再び加害者と被害者の間で責任を分配することになる。このような強制責任保険の賠償原則および交通事故損害賠償の帰責原則はかなり特異だと言わざるを得ない。