著者
辻坂 真也 Shinya Tsujisaka
出版者
同志社大学一神教学際研究センター(CISMOR)
雑誌
一神教世界 = The world of monotheistic religions (ISSN:21850380)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-20, 2021-03-31

紀元前4千年紀から、3千年紀末期までの古代メソポタミアにおいて、シュメールの神エンリルは、シュメール人の王権において重要な立場を担っていた。この神はしばしば、王権や、杖、国土などの授与者として現れていた。シュメール人最後の王朝であるウル第三王朝は、王の神格化を行っていたことで知られるが、この時代は王だけでなく、神エンリルと関わりの深い存在も神格化していることが確認できた。特に顕著だった事例が、神エンリルの玉座であり、この玉座は神格化されるだけでなく、神エンリルと並んで神殿に配置され、そして供物を受け取っていた。これはウル第三王朝において、玉座がその所有者の代理を務めるという機能を得ていたためであった。本論の目的は、エンリルの王権神としての役割の発展を分析すること、そしてウル第三王朝期における、神エンリルと関係する事物の神格化と、王の神格化の関係を検討することである。