著者
近藤 優美子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.164, pp.50-63, 2016 (Released:2018-08-26)
参考文献数
10

本稿では,補助動詞「しまう」のうち,現実の世界で既に実現した事態に接続するものをテシマッタとし,テシマッタが何を表すかと,そこから課される使用制約を明らかにした。 テシマッタは,実現した「事態は想定と異なる」という話し手の評価的態度を表す。そこから次の使用制約が課される。話し手は,具体的にはどのように「事態は想定と異なる」か,を表す情報を,聞き手が文脈から得られるようにする必要がある。検証は1.会話コーパスの分析,2.二種類の話し手の評価的態度「事態は想定と異なる」と事態は想定通りという文脈内での例文の自然度判定調査,3.会話作成調査の三つの手法による。2,3は母語話者調査である。 カーナビが「目的地に到着してしまいました」と言ったら不自然であるのは,機械であるカーナビが事態を評価することはない点,また目的地に着くという事態は想定通りである点でテシマッタの使用制約に反するからである。