著者
近藤 文里
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.65-78, 2000-06-30 (Released:2017-07-28)

本論文は、子どもの時期に受けた前頭葉損傷の後遺症に関する2つの仮説の妥当性を検討した。第1の仮説は、発達の早い時期に前頭葉に損傷を受けた子どもの場合は、障害がすぐには現れず、遅れて現れるとする「障害の遅延生起」仮説である。また、第2の仮説は、子どもの時期に前頭葉に損傷を受けた症例は成人のそれよりも行動の障害がより重いとする仮説である。この仮説を検討するため、従来報告された14症例について損傷時期ごとに分類したうえで、損傷直後とその後の行動特徴の推移を調べた。その結果、第1の仮説は支持されたが、より重要なこととしては発達の時期ごとに特徴的な問題が現れることが明らかになった。また、第2の仮説も支持されたが、子どもの時期に受けた前頭葉損傷のなかでも両側性前頭葉損傷は片側前頭葉損傷よりも重大な行動の障害を示すことが明らかになった。