著者
西岡 健太 速水 慶太 永田 鉄郎 川村 優理子 長 志織
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.250, 2016 (Released:2016-11-22)

【目的】エルゴメータ運動(以下:エルゴ運動)は,その簡便性から臨床で広く用いられている。エルゴ運動には有酸素運動能の改善に効果があるとされている。電気刺激療法は筋力向上運動として古くから用いられている。本研究の目的は,エルゴ運動に電気刺激を組み合わせることで有酸素運動による最大酸素摂取量の向上に加え,筋力も併用して向上するかを明らかにすることである。【方法】対象者は健常成人男性5名(平均年齢21.40±0.49歳)で,電気刺激を用いてエルゴ運動を行う群(以下ES群)とした。ES群は,エルゴ運動中に両下肢の大腿四頭筋とハムストリングスへ交互に電気刺激を印加させた。介入期間は1回約30分間を週3回6週間(計18回)行った。評価は,大腿直筋の筋厚測定の為に超音波を用いた。利き下肢の膝関節屈曲伸展筋力測定(60,180deg/sec)の為にBIODEXを用いた。有酸素能力向上を確認する為に,呼気ガス装置を用いて最大酸素摂取量を測定した。介入前後に測定を行い,SPSSver20を用い,対応のあるt検定を用いて運動効果を確認した。【結果】(1)筋力における筋力改善結果は,60deg/secにおいて,総仕事量(J)(改善率26.26%,P=0.001),平均パワー(W)(改善率21.45%,P=0.015),全体総仕事量(J)(改善率20.10%,P=0.001)であった。180deg/secにおいては,伸展総仕事量(J)(改善率23.04%,P=0.008),伸展平均パワー(W)(改善率22.59%,P=0.001),の項目において有意な改善が認められた。また,筋厚においては大腿部膝上10cm(改善率8.75%,P=0.009)に有意な改善が認められた。他の項目は認められなかった。(2)最大酸素摂取量最大酸素摂取量(ml/kg/min)(改善率8.26%,P=0.020)で改善が認められた。【考察】本研究結果から,限定的であるが,エルゴ運動は有酸素運動能および無酸素運動能において,改善が認められた。①膝屈伸筋力今回行ったエルゴ運動では,運動抵抗を自らの身体に作り出し,運動負荷が加わる為,BIODEXによる筋力測定においてES群では有意な筋力向上が認められたと考えられる。また,筋厚においても有意な改善が認められ,筋肥大が認められた。②最大酸素摂取量最大酸素摂取量が改善し,心肺機能向上が認められた。この理由はエルゴ運動による活動性増加により,骨格筋の酸素利用能の増加で生じる形態的および機能的変化が発生した為であると推察される。ES群は抵抗運動効果が強かった為に,運動強度が上がったと考えられる。【まとめ】エルゴ運動に電気刺激を組み合わせることで筋力増強と最大酸素摂取量の両方が改善された。このことから効率の良い運動が可能となる。今後は運動強度の設定方法の確立を考慮する必要がある。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は国際医療福祉大学倫理委員会の承認(承認番号:13-Io-124)を得た後,対象者には事前に研究内容を説明し,書面にて同意を得たうえで実施した。なお,本研究発表を行うにあたり,ご本人に書面にて確認をし,本研究発表以外では使用しないこと,それにより不利益を被ることはないことを説明し,回答をもって同意を得たこととした。