著者
進藤 由紀子
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.59-72, 2009-03-25 (Released:2014-02-28)
参考文献数
38
被引用文献数
2

成長発育期の小児の歯列・咬合と口呼吸に関する研究は歯科外来患者を対象としたものが多く,小児一般集団を対象とした研究は見当たらない。そこで平成14〜15年度に小学生を対象として行われた「山梨県咬合育成モデル事業」における実態調査資料から歯列・咬合と口呼吸の関連を分析したところ以下のような結果が得られた。 1. 「口呼吸」と判定された者の割合は全体で29.0%で,高学年になるに従って減少を示した。「安静時開口」の割合は50.5%であり,学年を通じて多かった。 2. 「異常嚥下」の割合は全体で29.9%であり,「舌突出癖」の割合は18.9%であった。どちらも低学年ほど増加を示した。 3. 耳鼻咽喉科検査では「鼻炎」の割合が最も高く全体で18.5%であり,次いで「アレルギー性鼻炎」の割合が高く10.0%であった。 4. 上下顎切歯の咬合状態のうち「上顎前突」の発現と検査項目の「口呼吸」および「異常嚥下」,「鼻炎」に加え,アンケート質問項目の「咬唇癖」および「歯ぎしり」,「鼻水」,「口呼吸」,「スイミングスクール」との間に有意な関連を認めた。 5. 検査項目およびアンケート質問項目の「口呼吸」はそれぞれ『口腔習癖の多さ』と『鼻気道閉塞の程度』を表す因子と関連していた。 以上より成長発育期の小児の歯列・咬合は口腔機能や耳鼻咽喉科疾患などの機能的な環境要因,特に口呼吸と密接に関連していることが示唆され,耳鼻咽喉科との連携が小児の咬合育成を進める上で重要であることが確認された。