著者
加藤 内藏進 加藤 晴子 逸見 学伸
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.203-216, 2009-04-30
被引用文献数
1

本研究では,加藤・加藤(2006)(KK06と略記)が指摘した4月初め頃の日本列島での急昇温と春を歌った童謡・唱歌に注目し,気象と音楽とを連携させた授業実践を試みた.まず,上記の急昇温の気候学的位置づけについてKK06の結果を要約するとともに,1981-1990年の毎日の地上天気図に基づく解析等を追加して,この時期のモンゴル付近における日々の卓越システムの季節的交代を確認した.次に,春を歌った童謡・唱歌の歌詞を分析した.その結果,春を歌った曲の多くは,二十四節気の春分・啓蟄〜穀雨,すなわち,上述の時期を素材としていることが分かった.以上を踏まえながら,小学校第5学年の児童を対象として,気象と音楽を関連させた研究授業を計3校時分行なった.内容は,日本付近の4月初め頃の急昇温を子供たちが把握し,それを踏まえて歌唱表現学習を行うものである.本論文では,その第1校時目(気象を中心)について,教材準備のための検討点,授業の観察や分析に基づく成果と問題点を報告する.「昇温量」と「気温自体」の混同が一部の子どもたちに見られるなど,指導法の更なる工夫の必要性も示唆されるものの,本事例は,日本の季節の進行と季節感を切り口とする気象と音楽の連携についての可能性を示すものと言える.